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常世語のお題(尚陽編)

賑やかな花庁おおひろま

「何やら随分楽しそうだな」

 景王陽子と側近が揃って賑やかな宴を開く花庁に、明朗な男の声が響いた。聞き覚えのあるその声を耳にした祥瓊は、思わず己が主の顔を見やった。
 武断の女王が、一瞬輝くような笑みを浮かべる。祥瓊はしばし目を見張って友人でもある主の顔を凝視した。しかし──。

「まあ、なんとお耳の早いこと。いつも、ここぞとばかりによいときに現れますね、延王」
「相変わらず、素晴らしい出迎えの言葉だな、景女王」

 女王は間髪容れずに応えを返し、にやりと笑んだ。女王の伴侶である隣国の王は呵呵大笑し、軽口を返す。たちまちいつもの中身のない舌戦を繰り広げる二人の王を、祥瓊は脱力して見つめるのみであった。

2008.07.25.
 長いものに詰まると短いものを書きたくなります。 そんなわけで、お題消化してみました〜。 尚陽編ですが、たまには視点を変えて。お楽しみいただけると嬉しいです。

(「やっぱり恋する乙女だと一瞬でも見直しただろう祥瓊の脱力感が笑えます」との ご感想をいただきました。ありがとうございました! 2008.08.05.追記)

2008.07.25.  速世未生 記
(常世語のお題(尚陽編)「に」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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