「目次」
「玄関」
常世語のお題(尚陽編)
ぬくもりの残る
温婆子
(
ゆたんぽ
)
「──もう。せっかく温めた温婆子を、衾褥の外に出さないで」
ある寒い夜、伴侶が眉を吊り上げた。ぬくもりの残る温婆子を蹴り出しながら、尚隆は挑発的に笑ってみせる。
「温婆子になぞ頼らなくても、温かくなる方法はあるぞ」
眉根を寄せる伴侶を引き寄せて、ほら、と抱きしめた。伴侶は頬を染めて口籠る。
「あ、温かいのはいいけれど……」
「けれど?」
「──暑くなっちゃうじゃないか」
「暑ければ脱げばよいだろう」
尚隆はにやりと笑って伴侶の夜着に手をかけた。まだ暑くない、と言い募る朱唇を甘く塞ぐ。そして寒い夜は、熱く更けていったのだった。
2007.09.18.
いやはや。拍手其の百三十四「真夏の熱い夜」に呼応するお話と相成りました。 進歩がないとおっしゃらないでくださいね……。
2007.09.18. 速世未生 記
(常世語のお題(尚陽編)「ぬ」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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