「目次」
「玄関」
常世語のお題(尚陽編)
眠そうな
家公
(
だんな
)
「いらっしゃいませ。──あれ、風漢、お久しぶり」
馴染みの店に入ると、多少眠そうな顔をした店主が早速声をかけてきた。尚隆は軽く頭を下げて応えを返す。
「無沙汰したな」
店主は尚隆の隣に立つ麗しき伴侶に視線を移し、目を見張った。そのまま伴侶をじっくりと眺め、感嘆の溜息をつく。そうして尚隆の意に叶う問いを投げかけた。
「──えらい別嬪さんをお連れだけど、何者なんだい?」
「俺の妻だ。宝珠という」
人の悪い笑みを浮かべ、はさらりと告げる。妻と紹介された伴侶は頬を染めて羞じらいつつ店主に会釈した。
「──へ?」
店主は寝ぼけたような顔をして間抜けた声を上げる。それは尚隆を大いに満足させるものであった。
2011.08.16.
中編「宝珠」@夜話(本館)連作「慶賀」の一場面でございます。 本編は陽子視点でございましたが、自慢げな尚隆を書きたくなったもので。 お粗末でございました〜。
2011.08.16. 速世未生 記
(常世語のお題(尚陽編)「ね」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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