「目次」
「玄関」
常世語のお題(尚陽編)
人待ち顔の騎獣
「──遅いな」
玄英宮の禁門前で、女王はぽつりと呟いた。その足許に隠形する班渠は、黙したまま麗しき女王を眺める。女王は小さく溜息をつき、佇む
騶虞
《
すうぐ
》
に手を伸ばした。延王の騎獣は、その背に既に鞍を乗せ、主を待っていた。
「遅いね、たま」
再びそう呟いて、女王は騶虞に凭れかかる。騶虞は女王に応えるかのように、くおんと小さく鳴いた。班渠は思わず笑いを零す。女王は眉根を寄せて問うた。
「──班渠。何が可笑しい?」
「失礼仕りました」
人待ち顔が騶虞と同じだ、と告げたなら、きっと女王は勘気を見せるだろう。
そう思い、班渠は澄まして笑いやめたのだった。
2009.03.13.
かなりお久しぶりの「常世語のお題(尚陽編)」でございます。 お題も残りが少なくなってまいりますと、なかなか進みませんね〜。
そんなわけで、尚陽編なのに班渠の登場と相成りました。 お楽しみいただけると嬉しいです。
(「受けました! イヤン班渠ったらお茶目だわ〜」とのご感想をいただきました。 受けてよかったです! ありがとうございました♪ 2009.04.15.追記)
2009.03.13. 速世未生 記
(常世語のお題(尚陽編)「ひ」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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