「目次」
「玄関」
常世語のお題(尚陽編)
踏み固められた
広途
(
おおどおり
)
吹雪に負けて思いがけず寄った街。朝になって房室の窓から見下ろした広途は、見事に踏み固められていた。
「雁ではな、こんな日には州師が横一列に並んで歩いて広途を踏み固めるのだぞ」
感嘆の溜息をつく陽子に、尚隆はそう言って笑った。陽子は目を見張り、つくづくと広途を眺める。
「へえ、雁の州師にはそんな仕事もあるんだ」
尚隆は何も返さない。振り返ると、大きな肩が小刻みに震えている。陽子は伴侶を睨めつけた。その途端、尚隆が堪えきれずに吹き出す。陽子は頬を染めて怒鳴った。
「──また騙したんだね!」
「お前はやはり面白い女だ」
この街は交通の要所なのだ、と続け、尚隆はまた笑う。それから陽子の膨らんだ頬に口づけたのだった。
2008.07.22.
季節外れでごめんなさい〜。けれど、楽しく一気書きした小品でございます。
実は、小学生時代、雪が降れば体育はスキー。 スキー場の麓に一同横一列に並び、雪踏みをしながら上まで登らされたものです。 そんなことを懐かしく思い出してしまいました……のは暑さからの現実逃避かもしれません(笑)。
(「陽子の純さと尚隆の悪戯っぽさが良い味出てます」とのご感想をいただきました。 ありがとうございました〜。2008.08.05.追記)
2008.07.25. 速世未生 記
(常世語のお題(尚陽編)「ふ」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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