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常世語のお題(尚陽編)

減らず口を叩く匪賊ごろつき

「匪賊が暴れているという話だったが」
「一足遅かったね」
 駆けつけた男は大きな肩を竦め、深々と嘆息した。声をかけられた方はにやりと笑みを返す。乱闘が終わったばかりの小途と相手を見比べて、男は唇を歪めて笑う。
「匪賊が減らず口を叩く。──見目はよいがな」
「──え、いや風漢には私が匪賊に見えるのか?」
 男の軽口に、相手は端正な顔を蹙めて問い質す。風漢は我が意を得たりというように大笑いした。
「匪賊ならばひっ捕らえて仕置きができるからな」
「お仕置きしたいのは私の方だって分かってる?」
 気儘に宮城を抜け出す国主を迎えに来た隣国の女王は、そう言って盛大な溜息をつく。その細い肩に手を回し、風漢を名乗る延王尚隆は、またも呵々大笑したのだった。

2009.04.15.
 たまには桜以外のものを、と思い、一気書きいたしました。 お楽しみいただけると嬉しいです。

2009.04.15.  速世未生 記
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背景画像「篝火幻燈」さま
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