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常世語のお題(尚陽編)

星明りの下の園林ていえん

「──綺麗」
 夜空を眺める伴侶が微かに呟いた。見上げると、満天の星空が目に入る。伴侶は、吐息のような、溜息のような声で続けた。
「──星座が、全然違うんだね」
「──帰りたくなったか?」
 尚隆は唇を歪め、伴侶を怒らせる意地悪な問いかけをした。しかし。ううん、と小さくかぶりを振って、伴侶は尚隆の腕にそっと華奢な腕を絡めた。

「あちらには、あなたがいないもの」

 だからどこにも行かないよ、と言って寄り添う温もりを、愛おしい、と思った。星明りに白く浮かび上がる、園林の小道での散策を、二人は堪能する。柔らかな沈黙に包まれて。

2007.06.23.

 星空の下ではロマンチックに……と思って書きましたが、少ししんみりでしょうか。 星明りに浮き上がる白い小道を書きたかったのかもしれません。

2007.07.02.  速世未生 記
(常世語のお題(尚陽編)「ほ」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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