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常世語のお題(尚陽編)

街外れの舎館やどや

「──ちょっと待って!」
 二人で入った街外れの舎館。当然のように伸ばされた伴侶の腕を、陽子は躱して言った。どうした、と不機嫌に問う伴侶の目をしっかと見据えて陽子は続けた。
「久しぶりに会えたから、もう少し、話をしたいんだ」
「──そうか」
 言って伴侶は限りなく優しい笑みを見せる。見慣れているはずなのに、陽子は不覚にも伴侶の笑顔に見とれてしまった。その隙を見逃す伴侶ではない。あっという間に引き寄せられて、唇を甘く塞がれた。
「──尚隆(なおたか)、待ってってば! 話をしようって……」
「お前の身体は、唇より、もっと話したがっているぞ」
 抗う陽子を愛撫しながら、伴侶は人の悪い笑みを見せて囁く。陽子の降伏は、もう、時間の問題だった。

  2007.06.27.
 たまには陽子視点で、と思いましたら……(笑)。 やっぱり虐められてしまってますね〜。 可愛い陽子主上と意地悪尚隆は、私の「萌え」ツボなのです。 どうぞ笑ってお許しくださいませ!
 (「色」がなければ「バカップル」とのご感想いただきました/笑。2007.07.19.追記)

2007.07.09.  速世未生 記
(常世語のお題(尚陽編)「ま」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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