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常世語のお題(尚陽編)

見晴らしのよい路亭あずまや

 捜し人は見晴らしのよい路亭にいた。卓に頬杖を着き、遠くを見つめる伴侶を、気づかれぬように眺めた。
 相も変わらず男物の長袍を纏いながら、凛然とした光を放つ麗しき女王。何を思っているのか、時折口許に楽しげな笑みを浮かべる。
 時がとまったように静かな庭院で、寛いだ貌を見せる伴侶。

 その眼差しの先を、ともに見たい──。

 不意に伴侶がこちらを向いた。僅かに目を見開いた伴侶は、花ほころぶように笑い、ゆっくりと立ち上がる。尚隆は我知らずその様に見とれていた。笑みを湛えた伴侶が嬉しげに言った。

「今、あなたのことを考えていた」

 その一言が嬉しくて、尚隆は歩み寄る伴侶を抱き寄せる。そして、そっとその朱唇に口づけを落とした。

2007.08.27.
 久々の拍手更新……何故か「常世語のお題(尚陽編)」になってしまいました。 なんだか少し恥ずかしいのですが……どうしてでしょう?

 (それは風になっていたからでは? との納得いくご回答をいただきました!  そういう風が吹いた、ということにしておいてくださいませ/笑。2007.09.14.追記)
 
2007.09.10.  速世未生 記
(常世語のお題(尚陽編)「み」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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