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常世語のお題(尚陽編)

模様の浮き出る羅衫うすもの

「珍しいものを着ているな」
「よく分かったね。氾王からの贈り物なんだ」
 ほんとは着たくなかったんだけど、と言いながらも、伴侶はほんのりと頬を染める。模様の浮き出る洒落た羅衫は、清麗な女王によく似合っていた。しかし、尚隆は眉根を寄せて呟く。
「あんな奴の贈り物など、着る必要はない」
「私も着る気はなかったんだけど……」
 でも、鈴と祥瓊が、と伴侶は口籠る。それを聞いて、尚隆は口許を歪めて笑った。
「──なるほどな。では、代わりに文句を言っておこう」
 伴侶は素直に頷いた。が、もっとよいものを贈るから、必ず着せろと言ったなら、女王の友たちは、きっとほくそえむことだろう。尚隆はそう思い、小さく息をついた。

2007.06.28.
 ああ、とうとう尚陽編までを拍手に出してしまいました〜。 拗ねたかの方は、オマケにするには可愛らしかったので、ということにしておきます(笑)。

2007.07.31.  速世未生 記
(常世語のお題(尚陽編)「も」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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