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常世語のお題(尚陽編)
有名な
海客
(
かいきゃく
)
「──小娘一人に随分騒ぎ立てる」
塙王からの書簡を放り、延王尚隆は薄く笑む。巧から雁に逃げこんだ海客の引渡しを求める書状であった。年の頃は十六、七、緋色の髪の娘。抜き身の剣を持ち、極めて凶悪である、と。
先日、景麒が雁を訪れた。新王が蓬莱にいるかもしれない。景麒はそう言って助言を求めた。その後、景麒は蓬莱に向かい、そのまま消息を絶った。
塙王の前代未聞の申し入れは、その海客が新王である証拠だろう。慶の偽王には、何者かが援助している、それが何を意味するのか、尚隆は既に気づいていた。
そして、不在の台輔宛に書簡が届く。
景王、雁にあり、と──。
その情報は恐らく真。延王尚隆は有名な海客となった景王を自ら迎えに赴くのであった。
2008.07.22.
長編「月影」第1回第1章と被っているような……。 けれど、この小品は回想ではないですよ、と言い訳しておきましょう(苦笑)。
(「すごく冷徹な表情をした尚隆の姿が浮かびます。その後を思うと、別人のようだわ〜(笑)」 とのご感想をいただきました。ありがとうございました! 2008.08.05.追記)
2008.07.25. 速世未生 記
(常世語のお題(尚陽編)「ゆ」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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