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常世語のお題(尚陽編)

老獪な郷長

「昔、税をきっちり七割取り立てる郷長がいたんだ」

 景王陽子は思い出したように溜息をつく。すると、そいつは凄い、と隣に坐る隣国の王からすかさず合いの手が入った。
「そういう能吏は、散々貯めこんだところを見計らって引っ括ればよい」
「あなたならほんとうにやりそうで怖い」
 陽子は肩を竦めて嘆息する。尚隆はくすりと笑い、楽しげに答えた。
「よく分かったな」
 え、と陽子が見上げると、尚隆は人の悪い貌をした。

「貸しを大幅に上回る富を返してくれたぞ」

 老獪な郷長に相対するには、このくらいの強かさが必要だったか、と陽子は大きく嘆息したのだった。

2011.12.26.
 「常世語のお題」の「老獪な郷長」と一緒に書いたものでございます。 あちらとはかなり感じが違いますねぇ。 お粗末でございました〜。

2011.12.26.  速世未生 記
(常世語のお題(尚陽編)「ろ」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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