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常世語のお題

暖かな湯菜しるもの

「さあ、どうぞ」
「──ありがとう」
 何も訊かず、柔らかな笑顔で差し出された椀を受け取り、陽子は涙を堪えた。暖かな湯菜は凍えた心までも温めてくれたのだ。

 善い国を作ります。

 名も知らぬ市井の女に、景王陽子は胸で呟き、深く頭を下げた。

2006.10.31.
 最初はやはり陽子でしょう、とばかりに書き流した小品でございます。 どんな場面なのだろう、と連鎖妄想するのもまた楽しからずや、という感じです。

2007.06.22.  速世未生 記
(常世語のお題「あ」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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