常世語のお題

うつ伏せに倒れた妖魔

「──陽子」
　うつ伏せに倒れた妖魔の死骸に息を呑み、楽俊は思わず小さな声で呟いた。胸に鮮やかに甦る、紅の髪を靡かせて剣戟を振るう華奢な娘の姿。
　王となった彼女が、柳になどいるはずがない。それでも、友を思い出したのは、同じ年頃の旅の道連れを得たからかもしれない。

　陽子、元気か。おいらは元気でやってるぞ。

　楽俊は笑みを浮かべ、懐かしい親友に、胸の中で語りかけた。

2007.02.11.

　「風の万里〜」で祥瓊とともに柳を旅する楽俊、という設定でございます。 解説しないと解らないというのはまずいかも……。

　（「大丈夫、解りますよ！」と拍手コメントいただきました〜。 ありがとうございます。（2007.06.26.追記）

2007.06.16.　　速世未生　記