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常世語のお題

枯れた玉泉ぎょくせん

「月渓さま、とうとう玉泉が……」
「──枯れてしまったか」
 臣下の奏上に、芳極国仮王月渓は深い溜息をついた。天意を受けた王がいない今、この国はじわじわと沈んでいる。天候が荒れ、妖魔が現れ、そして、玉泉までが枯れていく。

 麒麟旗は、まだ揚がらないのだろうか。それは──大逆を犯した己に対する報い、なのだろうか。

 国を救う希望たる麒麟が誕生し、正当なる王を選ぶことを、仮王である月渓こそが、誰よりも望んでいた。

2007.06.21.
 月渓は仮王となっても称号で呼ばせない、という妄想でございます。 先日、「乗月」を読み返したら、こんな場面が心に浮かびました。

2007.06.26.  速世未生 記
(常世語のお題「か」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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