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常世語のお題

傷だらけの皮甲よろい

「……景麒?」
 翠玉の瞳を瞬かせ、新しき主は静かに問う。主が纏う皮甲は、新しいものにも拘らず、傷だらけになっていた。
 蓬莱に迎えに行ったとき、戦いを拒んだ弱々しい娘はもういない。血を浴びることを厭わず、自ら景麒を救いに来たこの方こそ、我が主。
 解放された景麒は、血の臭いに怯むことなく、主の前に身を伏せる。そして、心から誓約の言葉を述べた。

2007.05.28.
 長編「月影」第10章の景麒視点でございます。 陽子には解らなかったと思いますが、このときの景麒は、最高に幸せだったろうな、と 妄想してしまいます……。

2007.06.26.  速世未生 記
(常世語のお題「き」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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