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常世語のお題

擦り切れた佳氈しきもの

「主上」
 廉麟は主を見つけて声をかけた。紅嘉祥を見上げて座っていた廉王世卓は、笑顔を見せて廉麟を隣へ誘う。
「まあ、こんなに擦り切れた佳氈を使っているの?」
「綺麗なものは汚してしまうからね。あ、でも、台輔の服が汚れてしまうかな」
 呆れ顔の廉麟に、世卓は困惑して頭を掻いた。廉麟は首を横に振り、主の隣に腰を下ろす。
「──仕方ない方ね」
 そう言いながらも、いつまでも変わらない飾らぬ主に、廉麟は明るい笑みを返した。

2007.07.04.
 初書きの廉王世卓でございます。 天然廉麟をも呆れさせる天然主上であって欲しいです〜。

 (ほのぼの夫婦、というご感想をいただきました/笑。2007.07.12.追記)

2007.07.09.  速世未生 記
(常世語のお題「す」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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