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常世語のお題

逞しい半獣

「素手以上だな。──援護は陽子に頼む」
 眉を蹙める陽子に笑みを残し、桓魋かんたいは走り出す。国のために力を尽くす「殊恩」の連中になら、正体を見せてもいい。
 確信を持って、桓魋かんたいは迫り来る雲橋を薙ぎ払う。繰り出された槍の穂先を断ち切った陽子に、悪いな、と熊の姿で礼を返した。
「──どうりで尋常でない怪力だと思った」
 逞しい半獣に、陽子は軽く笑う。動じないその姿に、桓魋かんたいは己の見る目の正しさを知り、満足げに笑んだ。

2007.07.14.
 「黎明」では書かなかった一場面でございます。 「黎明」を読み返し、己が見た陽子主上を、浩瀚たちに誇らしげに語る 桓魋かんたいを 微笑ましく思いました。そして、胸の内を覗いてみたくなったのでした。

2007.07.19.  速世未生 記
(常世語のお題「た」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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