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常世語のお題

小さな野木やぼく

「うわあ、妖魔だ!」
「逃げろ!」
 襲いくる妖魔を前に、人々は小さな野木に殺到する。逃げ遅れた者を容赦なく襲う妖魔。そんな阿鼻叫喚を、蒼穹に浮かぶ悧角の背から見下ろしていた延麒六太は目を伏せる。
「──塙王は、なに考えてやがるんだ」
 王が在位している国で、これほどまでに妖魔が出るとは。慶の偽王を手助けしているという噂は本当らしい。そう確信し、六太は苦い思いを抱きつつ巧を後にした。

2007.07.19.
 「月の影〜」であちこち調べ回っていたはずの延麒六太の一場面を書いてみました。 麒麟がこんなものを見るのは、さぞ辛いだろうな、と思いつつ……。

2007.07.19.  速世未生 記
(常世語のお題「ち」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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