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常世語のお題

露に濡れた箭楼みはりば

 露に濡れた箭楼に立ち、虎嘯は未明の拓峰を見下ろす。散々民を食い物にした豺虎は、街に降臨した神なる王に退治されて姿を消した。

「──陽子が、王だったとはな」

 小娘とは思えぬ戦い慣れた剣戟を振るい、そのくせ相手に止めを刺さない甘さを見せる。そして、火が放たれた城下に民を救いに走ったあの娘が新王。
 明けぬ夜はない。昇りゆく朝陽を見つめ、虎嘯は笑う。拓峰の、そして慶の長い夜は、やっと終わりを告げたのだ、と。

2007.07.30.
 長編「黎明」余話でございます。 本編では陽子が景王だと理解していなかった虎嘯が、真実を教えられたらどう思うかな、との 妄想でございました。

(かっこよすぎ? との声も上がりました/笑。2007.08.08.追記)

  2007.07.31.  速世未生 記
(常世語のお題「つ」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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