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常世語のお題

見晴らしのよい路亭あずまや

 女王は、見晴らしのよい路亭に座していた。毅然とした貌で、真っ直ぐに前を見つめて。頑丘はそっと頭を下げる。それから、静かに声をかけた。
「──珠晶」
「頑丘。いい加減に誰もいないときにも主上と呼びなさい」
「小生意気な小童を主上と呼ぶ趣味はない」
 にやりと笑う頑丘を、小さな女王はじろりと睨む。

 主上と呼ばない者が、お前にはまだ必要だろう。

 そんな本音を、頑丘が面に出すことは、無論なかった。

2007.12.21.
 珠晶にはこんなふうに接してくれる頑丘が必要なのでは……との妄想でございました。

2007.12.22.  速世未生 記
(常世語のお題「み」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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