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常世語のお題

無口なげじょ

「──ありがとう」

 突然かけられた声に驚いて振り向くと、堂室に戻ってきた国主景王が笑っていた。奚は慌てて叩頭した。
「そんなことしなくてもいいのに……」
 女王は溜息をつく。王が取るに足りない己に声をかけること自体、奚には戸惑うことであった。しかし。

「邪魔をしてごめんね。仕事を続けて」

 言って女王は出て行く。奚は扉の閉まる音を確認してから頭を上げた。女王のために、精一杯尽くそう。奚は再び深く頭を下げた。

2007.12.07.
 久しぶりの「常世語のお題」でございます。 こちらはなるべく順番に出すつもりでおりましたが、だんだんそうも言ってられなく なってまいりました(苦笑)。
 「常世語のお題(尚陽編)」でも登場いたしました奚さんでございます。 初期にこんなことがあったから……なんて妄想してしまいました。

2007.12.14.  速世未生 記
(常世語のお題「む」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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