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常世語のお題
焼け残った里木
「──焼き払え」
叛乱の報せに、戴国僭主阿選は冷たく命じる。今や逆らう者はない。
白い雪を汚し、黒煙を燻らせる里に、阿選は感慨のない目を向ける。焼け爛れた臭いすら、冬の冷気が奪う。無人の里中に歩を進める阿選が目に留めたもの。それは。
瓦礫ばかりの里の奥に、ひっそりと立つ、純白の木。
「──何のために残る? 滅びを待つのみのこの国に」
焼け残った丸裸の里木を眺める阿選の低い笑い声は、哄笑となって辺りに響いた。
2008.01.17.
焼け残った里木を眺める阿選の背中をずっと見つめておりました。 なかなか語り出してくれず、焦れておりました。 今冬最低気温を更新した、今朝の空気が味方してくれたように思います。
この方は、きっと、これ以上は語ってくれないのでしょうね……。
2008.01.17. 速世未生 記
(常世語のお題「や」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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