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常世語のお題
割れた
茶杯
(
ゆのみ
)
がしゃん、と小気味のよい音がして、茶を湛えた白磁の茶杯が砕け散った。一瞬の沈黙の後、深い溜息が零される。
「ああ、最後の白端だったのに……」
利広がぽつりと呟いた。名残惜しそうにそう言う兄に、濡れた大卓を拭いていた文姫はくすりと笑いかける。
「実は慶に行く口実ができたと喜んでいるでしょう?」
「おやおや、文姫こそ、慶の消息を聞きたいのではないかい?」
利広と文姫は顔を見合わせて笑いあった。
2011.08.30.
すっかり陽子主上とお友達になった頃の利広と文姫を書いてみました。 捏造満載でございますが、書くのが楽しかった小品でございます。
2011.08.30. 速世未生 記
(常世語のお題「わ」)
背景画像「篝火幻燈」さま
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