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五題「夢」其の一

あなたに、夢を。

 見下ろす瞳が微笑む。そっと頬に手を伸ばした。見つめあい、そして、口づけを交わす。その唇が、耳許で囁いた。おやすみ、と。
 微笑みとともに、おやすみ、と返し、陽子は目を閉じる。伴侶の温もりを、肌に直に感じ、幸せを噛みしめながら。

 ふと、目を覚ます。身体を包む温もりが、そこにあった。そして、息がかかるほど近くに、伴侶の顔を見つける。独りではない夜。安らげるひととき。
 陽子は穏やかな寝顔を見つめ、唇を緩める。この想いを、伝えたい──。

 だから、あなたに、夢を。温かく、幸せな夢を。

 密やかに願い、陽子は再び心地よい眠りに身を任せた。

2008.11.14.
 柔らかな言葉を使いたくて、優しいお話を書きたくて、お題配布サイトさまにお邪魔しました。 そこで見つけたお題でございます。
 ささくれた心を鎮める為に書いたお話、お気に召していただけると嬉しいです。

2008.11.14.  速世未生 記
(拍手其の二百四十八)
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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