「管理人作品」 「祝11周年黄昏祭」

奏国道中@管理人作品第1弾

2016/09/01(Thu) 12:34 No.1
 祝11周年!
 本日の北の国、最低気温は21.7℃、最高気温は29.1℃でございました。 9月とは思えない気温でございます。
 今夏の北の国はチャンスー・コンパス・ミンドゥルそしてライオンロックと、 台風が立て続けにやってまいりました。各地で甚大な被害が出ております。 我が街は比較的大丈夫なのですが、 あちらこちらで道路が冠水したり橋が落ちたりと交通が寸断されている状態でございます。
 各地で被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。 そして早急な復旧をお祈り申し上げます。

 さて9月1日になりました。拙宅もとうとう11周年。皆さまのお蔭でございます。 ご来場ありがとうございます!
 そんなわけで、今年はアンケートを取らせていただきまして 「黄昏祭」を開催することになりました。 これから約1ヶ月、皆さまとともに楽しめるよう頑張ってまいりますね〜。

 投稿の見本を兼ねて管理人作品第1弾をお送りいたします。 よろしければご覧くださいませ。

奏国道中

2016/09/01(Thu) 12:35 No.2
 旅の支度を調えた景麒は、清香殿の入口にて延王尚隆を待つ。やがて現れた簡素な旅装の王に声をかけ、景麒は恭しく頭を下げつつ拱手した。
「延王」

「景麒、上から行く。使令に先触れさせてくれ」

 景麒を認めた延王は、すぐさま命を下す。景麒もまた即時に応えを返した。
「御意」
 いつもならば、隣国の気儘で放埓な王の非常識な言に異を唱えたであろう。しかし、今は時間が惜しい。蓬莱で見つかった泰麒の気配は、濃厚な腐臭を纏って病んでいた。早く泰麒自身を見つけて連れ戻さなければならない。そのための助け手を借りるために、これから奏へと赴くのだ。景麒は直ちに命を下し、使令を送り出す。そして、己も延王尚隆とともに雲海の上から旅立った。

 泰麒捜索を提案したのは景王陽子。登極から間もない景麒の主は、戴国将軍李斎の嘆願を受け、大国雁の王を論破して協力を取り付けた。泰麒捜索を采配する延王尚隆の要請に応えた国は漣・範・奏・才・恭の五国。蓬莱は胎果に任せて崑崙を捜索する、と宗王は請け負ったという。
 その宗王は、治世六百年に及ぶ最長命の国である奏南国の王。誼を結ぶ機会だ、と言っていた延王尚隆が、不意に問うた。

「お前は、他国の王を何人知っている?」

 質問の意図が分からず、景麒は眉根を寄せた。それでも、頭に浮かぶ王の数を答える。
「三人──延王、泰王、そして氾王でございます」

「宗王にお会いしたら、お前は安心するだろうな」

 景麒の応えを聞き、変わり者を自認する胎果の王は人の悪い笑みを見せた。景麒はますます眉を顰める。どういう意味だろう。景麒は黙して考えた。

 この世に十二人しかいない王。巧と芳が空位のため、現在玉座にいる王は十人だ。そのうち三人と誼があるというのは稀なることなのかもしれない。通常、他国の主従と深く交わることなどないのだから。
 稀代の名君、剣豪と称される延王尚隆は堂々たる体躯と王者の威厳を持つ。しかし、勝手気儘に現れては周囲を掻き回す放埓な王である。景麒は小さく嘆息した。
 泰王は威風堂々とした武断の王。小さな泰麒を竦ませるほどの覇気を持つ王らしい王と言えるだろう。
 そして、氾王は。景麒は思わず深い溜息をつく。延王の天敵だという範国の王は、男性ながら女物の襦裙を纏う麗人であった。己の主も男物の袍を好むが、まさか逆の王が存在しようとは。
 景麒は小さく首を振り、延王に視線を戻す。五百年玉座に君臨する大国の王は、楽しげに笑った。

「行けば分かる」

 訊いてすぐに答えをくれるような親切な人物ではない。分かっていながらも、景麒は溜息を呑みこむことができなかった。

 南の大国、奏南国の王都は隆洽。宗王が住まう清漢宮は、隆洽山の頂にあった。延王と景麒は、雲海の上に突き出る壮麗な宮殿の一角に到着する。そして、報せどおり待ち受けていた官吏たちに恭しく迎えられたのだった。
 内殿の掌客の間で宗王先新と対面する。宗王は。恰幅がよく王というに相応しい貫禄を持つ大きな男だった。
「ようこそいらせられた、延王、景台輔」
 重々しくそう声をかけ、宗王は破顔する。宰輔宗麟がその側に控え、六官の長たちもずらりと居並んでいた。
「宗王、ご無沙汰しております。此度は無礼な訪問で失礼仕りました」
 六百年の治世を誇る常世最長命の王に、延王尚隆は恭しく頭を下げる。景麒も黙してそれに倣った。
「火急の用件だとて、気にしておらんよ。どうぞ楽にしてくだされ」
 非礼を詫びる延王に、宗王は鷹揚な応えを返した。それから二人の王はにこやかに型通りの挨拶を交わす。いつ本題に入るのか。景麒は気を揉んでいた。やがて。

「久しぶりのお越しに、我が后妃も喜んでおる。後ほど茶会に付き合ってくださらんか」

 宗王は鷹揚にそう言った。景麒は密かに眉根を寄せる。雲海の上から訪れるほど火急の用だというのに、茶会など。しかし。

「喜んで」

 延王尚隆は即座にそう返し、その場はお開きとなった。南国の暢気さに、景麒は驚きを隠せない。一度掌客殿に下がって茶会の準備をする延王に、景麒は苛立ちを隠さずに訊ねた。
「延王……火急の用と知りながら、暢気に茶会などと……。宗王は、いったい、此度のことをどうお考えなのでしょうか」

「──景麒、今までは、ほんの序盤に過ぎぬ。その茶会こそが本番なのだ。陽子のために頑張れよ」

 いきり立つ景麒に、延王は不敵な笑みを見せる。景麒は問いを重ねた。
「どういうことでございますか」

「奏は、官が動かしている国ではない」

 五百年玉座に君臨する稀代の名君は、人の悪い笑みを浮かべる。景麒は眼を瞠った。

「──後宮が政を動かす、稀有な国なのだ」

 延王尚隆は常世最長命の国の秘密を語る。景麒がそれ以上問いを重ねることはなかったのだった。

2016.09.01.

後書き

2016/09/01(Thu) 12:44 No.3
 第1弾はリクエスト作品でございます。 原作では描かれなかった尚隆と景麒の奏への二人旅、 拙作長編「黄昏」第27回54章後半〜第28回55章前半にて尚隆視点で書いたものを 景麒視点で書いてみました。
 お楽しみいただけると嬉しゅうございます。リクエスト、ありがとうございました!

 さて、今年も栞を沢山挟んだ原作を積み上げて挑みますよ!  そんな管理人がお送りするマニアックで小さな秋のお祭でございます。 よろしくお願いいたしますね〜。 皆さまの素敵な黄昏作品を心よりお待ち申し上げております。

2016.09.01. 速世未生 記

黄昏祭開催おめでとうございます 由都里さま

2016/09/01(Thu) 21:33 No.4
 サイト11周年おめでとうございます!由都里です。
 未生様の「奏国道中」楽しませて頂きました。 景麒、お前ってやつは。こんなに感受性が高いのになぜ1ミリも顔に出ないんだ(笑) にもかかわらず、全く気に留めていない尚隆ってやっぱりすごいお方ですねえ。

お祝い申し上げます 篝さま

2016/09/01(Thu) 22:33 No.5
 11周年ならびに黄昏祭の開催をお喜び申し上げます。 約一ヶ月間どうぞよろしくお願い致します。

 待っておりました! 黄昏祭! 
 桜祭がついこの間のような気がしておりますが、気が付けば早数カ月…。 また楽しみができて嬉しい限りです。

 景麒と殿の会話はなかなか想像がつきませんが(笑)、きっと殿のことだから、 景麒の反応を楽しみつつも、 決して口数の多くない彼のことを考えて言葉を選んでいるのだろうな、などと思ったり。 人の悪い笑みを浮かべる殿を想像するとにけやが止まりませぬ。

 第一弾の投稿ありがとうございます。今後も楽しみにしております!

ハーイ ネムさま

2016/09/01(Thu) 23:48 No.10
 リクエストをしたのは私です(挙手)。 第1作目で書いて下さり、ありがとうございます!
 やっぱり会話がかみ合わない二人ですね(笑)  それでも景麒が延王の言葉にすぐ反応できるようになったのは、慣れたのか、 泰麒のためだからなのか。 尚隆の方は景麒と一緒にいると、ある意味飽きないのかもしれませんね。
 それにしても、改めて、十二国の王様たちは個性的ですね。 次回作で、この個性的な王とその国がどうなるか、早く読みたいです。

 これからの一か月間、また遊ばせて頂きますので、よろしくお願い致します m--m

11周年! おめでとうございます〜 饒筆さま

2016/09/02(Fri) 01:28 No.13
 11周年のお祝いを申し上げると同時に、台風被害にお見舞いを申し上げます…… 未生さまの身近では被害が小さくて良かったですね。ホッとしました。

 さて、ちょっぴりSっ気&洒落っ気満点の延王殿、 カタブツ景麒相手でもあっさり掌上で転がしていてカッコイイですね!
 でも「──後宮が政を動かす、稀有な国なのだ」ってあの…… 主上ご自身も後宮の事務室に遣り手の事務官を囲っていませんでしたっけ……?(あはは)
 宗国のお茶会でもさんざんオモチャにされる景麒を想像してさらに笑ってしまいました (フフフ)
 これからの展開にワクワクする第一弾をありがとうございます。

 今年もぼちぼちお邪魔させていただきますね♪

いらっしゃいませ! 未生(管理人)

2016/09/02(Fri) 17:49 No.14
 由都里さん、こちらでは初めまして。ツイッターではいつもお世話になっております(笑)。 ようこそ黄昏祭へ!
 拙作へのご感想もありがとうございます。 景麒は口にも顔にも出さないだけで色々思っているとの妄想でございました。 かの方は景麒で遊んでおりますので〜(笑)。

ご感想御礼 未生(管理人)

2016/09/02(Fri) 18:21 No.18
 皆さま、拙作にご感想をありがとうございました!

篝さん>
 11周年と黄昏祭開催に寿ぎをありがとうございます。 早速いらしていただけて嬉しゅうございます〜。
 私も先日桜祭が終わったばかりのような気がいたしております(笑)。 今回もお楽しみいただけるとありがたく思います。ご参戦もお待ちしておりますよ!
 確かに景麒とかの方の組み合わせはあまり想像できませんね(笑)。 かの方は景麒で遊んでいるのだと思います。 人の悪い笑みを思い浮かべてくださりありがとうございました〜。

ネムさん>
 おお、ネムさんのリクエストでございましたか! ありがとうございます〜。 なかなか好みの御題でございました(笑)。
 はい、かの方は面白がっております。 景麒は生真面目なので、個性豊かな王さま連中に驚いたことでしょう。 特に氾さまには(笑)。結局、一番まともに見える宗王にも驚くことになるでしょうね〜。

饒筆さん>
 はい、台風被害、我が街は小さくてほっと安堵でございました。 しばらくは北の国内での移動は大変そうでございます……。
 かの方をお褒めくださりありがとうございます! そして鋭いツッコミ(笑)。 妄想を邁進するご感想、嬉しく頂戴いたしました〜。
 はい、お茶会もご期待に沿えるよう頑張りますね〜。

Re: 祝11周年! 庚藍さま

2016/09/08(Thu) 20:23 No.38
 桜祭がつい昨日のことのようなのに、もう今は台風シーズンなのですね。 そしてこのお祭りはとても楽しみにしておりました。

 それにしても、滅多にお目に掛かれない尚隆の敬語、最高です。

 宗王が遠くに住んでる甥っ子をもてなすおじちゃんみたいで、 景麒が初めて会う田舎の叔父さんに警戒心剥き出しな都会の子みたいで、 なんか可愛いです!!

 大先輩の懐に臆面なく飛び込んでゆくのが、 尚隆の為政者としての器の大きさでもありますよね!

ご感想御礼 未生(管理人)

2016/09/08(Thu) 23:04 No.39
 庚藍さん、いらっしゃいませ〜。桜祭ではお世話になりました。 またいらしてくださり嬉しく思います。存分に祭をお楽しみくださいませ。 庚藍さんの黄昏作品もお待ち申し上げておりますね!

 拙作にご感想をありがとうございます。
 さすがのかの方も、大先輩には敬語を使うだろうとの妄想でございました(笑)。
 確かに宗王はかの方を可愛がってる感ありますよね! そして景麒……(笑)。 楽しい例えをありがとうございました。

最後の締めにしびれました AIKOさま

2016/09/15(Thu) 23:00 No.133
 こんにちは!
 黄昏祭第一弾にふさわしい素敵な作品‥‥!
 尚隆の力強い不敵な笑みや景麒の唖然とした顔が目の前に浮かぶようです。 やっぱり尚隆は伊達に500年国を治めてませんね!
 最後の後宮が支配する国っていうのにもーとってもしびれました!
 謎の多い十二国記の各国事情‥‥!  続きが読みたくてたまらなくなりました(*´∀`*)ノ。+゜*。

ご感想御礼 未生(管理人)

2016/09/16(Fri) 23:13 No.140
 AIKOさん、拙作にご感想をありがとうございます〜。 場面を思い浮かべていただけて嬉しく思いました。
 続きは、尚陽がお嫌いでなければ拙作長編「黄昏」第28〜29回あたりをご覧くださいませ。 尚隆が語っております(笑)。

おお…! 葵さま

2016/09/16(Fri) 23:21 No.141
 未生さま、こんばんは!
 あなたさまのぬるぬるしたナメコの傘の部分・葵でございます。
 おお、なんとおめでたくも華やかなお祭り開催第一弾は、延王と景麒の二人旅なのですね、 ああ原作のあのさらりと触れられた箇所を読み返すだに 「延王と景麒って道中どんな会話したんだろう。 てかコミュニケーションとれたのかしら」と以前より是非覗いてみたいと思っていた 場面でございます、ひゃっほう!(喜びの舞)
 未生さまの描かれた、あの延さまが鷹揚に先新と挨拶を交わす一幕は、 和やかながら剣の切っ先を合わせて互いの音を確かめたような緊迫感を感じました。 このあとのお茶会で景麒はどんな風に頑張ったのだろうと想像するだけでも ワクワクが止まりません。文姫vs景麒、いったいどんな会話を交わしたのでしょう(笑)
 いかにも切れ者、やるときはやる延さまのお背中に惚れ惚れとさせていただきました!

ご感想御礼 未生(管理人)

2016/09/17(Sat) 01:09 No.143
 葵さん、拙作にご感想をありがとうございます〜。
 ですよね! 原作にさらりと書かれていたこと、気になりますよね〜。 その末に書いてしまったものをお楽しみいただけて嬉しゅうございます。
 はい、かの方はやるときにはやる御方でございます(笑)。
背景画像「NOION」さま
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