「管理人作品」 「祝11周年黄昏祭」

延氾対決@管理人作品第4弾

2016/10/05(Wed) 23:57 No.257
 皆さま、いつも祭にご投稿及びレス、拍手をありがとうございます。
 台風18号チャバは温帯低気圧になったようですが、皆さまの地域は大丈夫でしょうか?

 本日の北の国、最低気温は10.7℃、最高気温は16.9℃でございました。 昨日の強風が嘘のように穏やかな日和、けれど気温はどんどん下がっております。 雪虫情報も出てまいりました。秋も終盤でございます。

 さて、今回(も/苦笑)超遅筆の管理人、やっとのことで四作目を仕上げました。 この方の本音を訊いてみたかったのでございますよ。よろしければご覧くださいませ。

※ 原作幕間捏造満載でございます。苦手な方はご注意を!

延氾対決

2016/10/05(Wed) 23:59 No.258
 泰麒の気配が見つかった。

 廉麟の報せを聞いた景麒と延麒は廉麟とともに蓬莱へ向かう。氾麟は他の者へ報せるために慌ただしく駆けていった。

 蘭雪堂に一人残された氾王は徒然に物思う。泰麒捜索は戴国将軍の嘆願を容れた景王が各国提携を謳い、延王の主導で始まった。雁からの要請を聞いて、氾王は少なからず驚いた。あの延王尚隆を動かした景王はどんな人物なのか。その為人を確かめたい。延王の指示を無視して慶に乗りこんだのは、そんな理由もあったのだ。

「泰麒が見つかったと聞いた」
 明朗な男の声に静寂が破られた。延王尚隆が戻ってきたのだ。氾王はゆったりと応えを返す。
「そのようだえ。今、三人が確かめに行ったところじゃ」
 聞いた延王は表情を引き締めた。膠着していた事態が動いたのだ。采配を振る者としては今後の動きを検討しなければなるまい。
 氾王は周囲を窺った。まだ他の者が戻る気配はない。この機会を逃す手はないだろう。氾王はずっと心に秘めていた疑問を延王に投げかけた。

「そなたは、何故、泰麒捜索を始めたのだえ?」

「──何を急に」
 氾王に眼を向けた延王は訝しげに問うた。答えをすぐに返すような簡単な相手でないことは分かっている。氾王は畳みかけた。
「何を急に、はこちらの科白じゃ。今まで放っておいたものを、何故、今になって捜す?」
「協力しておいて、今更それを問うか」
 延王は口許を歪め、皮肉に笑う。氾王は開いた扇子の陰で小さく息をついた。この男を動かした景王は、やはり只者ではなかろうと実感する。
「今、だからじゃ」
 氾王はぴしりと扇を閉じ、延王に突きつけた。そして、今まで口に出さずにいた、麒麟には聞かせられない本音をぶつける。
「英明なる延王は、台輔の諫言をやりすごし、泰果が生るのを待っていたのであろう?」

「それは、責められるべきことか?」

 問いの形を取ってはいたが、延王は否定しなかった。やはり、と氾王は微かに頷く。如何にどこかの国が混乱しようとも、他国が干渉するべきではない。待っていればいずれは新たな麒麟が生まれて王を選定する。それがあるべき姿なのだから。
「王ならば、当然考えることじゃな」
 氾王は首肯する。延王はにやりと笑みを見せた。それが本音だったはずなのに、この男はあの女王に助力しているのか。氾王は笑いを堪えらなかった。
「──それなのに、掌を返して泰麒を捜すことにしたのかえ」
「貴様、何を言いたいのだ?」
 延王は苛立たしげに声を尖らせる。何度も頷いた末に氾王は笑った。
「──度し難い稀代の名君を動かす景王は、大した器じゃな」
 五百年玉座に坐る延王尚隆は、情に流される男ではない。そして、その稀代の名君の協力を引き出した景王陽子は、己の意志を貫く強さを持っている。
「そうだろう。延王を論破するほどの者だからな。そうでなければ、俺もここまで助力はせぬよ」
 訝しげに氾王を見つめていた延王は、やがて唇を緩めてそう返した。この男が、あの若き女王に論破されたのか。その場にいて聞いてみたかった。そう思うと笑みが漏れる。
「ずいぶん惚れこんだものじゃな」
「おぬしとて、人のことは言えぬだろう。用が済んでも帰国せぬくらいだからな」
 延王は穿ったことを言い放つ。氾王自身も若き胎果の女王を大いに気に入ったことは確かだ。あの美貌にして頑なに男装を貫く女王。さりとて、強引に襦裙を着せてみれば素直に従う。賓客の顔を立てたのだろうが、その意外な反応をも氾王は楽しんだ。しかし。

 それをこの男に告げる必要はないだろう。

 本音を隠すのは、今に始まったことではない。氾王は扇子を広げ、密やかに笑った。延王の視線が鋭さを増していく。そんなとき。

 報せを聞いた景王陽子が蘭雪堂に駆け込んできた。が、若き女王は何も言わずに足を止める。聡い娘だ。氾王は内心感嘆した。氾王と延王の諍いなど日常茶飯のことなのに、気配の違いを敏感に察するとは。
「景女王、泰麒が見つかったようだえ」
 気遣わしげに二人の王を見比べる景王に、氾王ははんなりと返す。女王はほっと気を緩めた。その言葉を聞きながら、氾王は延王に眼を遣る。一時休戦を受け入れた延王は、口許を歪めて笑い、微かに頷いたのだった。

2016.10.05.

後書き

2016/10/06(Thu) 00:08 No.259
 「延氾対決」をお送りいたしました。なんとも捻りのない題名……(苦笑)。 拙作長編「黄昏」第23回45章の氾王視点でございます。 この場面、かの方の視点で書いたときには氾さまの本音がさっぱり解らなかった ものでございます。今回もなかなか素直に語ってくださらず、七転八倒しておりました。 なんとか纏めることができて嬉しゅうございます。 皆さまにもお楽しみいただけるとよいのですが。

 さあ、後4日でございます。皆さまの素敵な黄昏作品をお待ちいたしておりますよ〜。

2016.10.05. 速世未生 記

ビバ対決  アサギさま

2016/10/06(Thu) 19:37 No.264
 楽しく拝見しました〜! 未生さんの延氾対決好きです、 そして氾王にとっての陽子が至上なのが! 美貌!
 確かに「器量が良い」と言われながらも自分の中では、 少年よりの女王というイメージが拭えなくて、未生さんの話を読む度に確認してますw
 私もちょうど延氾対決ネタを模索していたので、 未生さんの話を読んで妄想を刺激したいと思います!
 黄昏の描かれていない部分を読めて嬉しかったです〜。氾王も男…なんですね(しみじみ)

しみじみと  篝さま

2016/10/06(Thu) 21:48 No.267
 改めて、こんなにも人々を惹きつけてやまない陽子さんという人間の魅力を 感じさせられました。
 最初こそ、利害が一致しただけの関係だったかもしれません。 それでも、言葉で、態度で、己という人間を示してきたのですものね。
 ほっと一息をついた陽子さんを、今とってもギュっと抱きしめたい衝動に駆られております… (あっあっ、景麒!その視線止めて。浩翰さま怖いです…桓タイも槍持たないで〜〜)

 素敵な作品をありがとうございました。

三百年の貫禄…! 由都里さま

2016/10/06(Thu) 22:45 No.269
 私、未生様の氾王大好きなのですよ〜! 今回は彼が主役で嬉しいです♡
 氾王はオカマではなくトランスヴェスタイトなのですよね。 だから心はきちんと男性。そこがかっこいいんです。 加えて未生様の氾王って、三百年の貫禄がとても良く出ているというか、 理路整然さが原作の三割増しサービスされていて、ほんとツボをついてくるのです…。 そんな氾王の御眼鏡に叶った陽子ちゃん…!  好きなキャラ2名をこんなに持ち上げてくださって、私は舞い上がっています。
 素敵な作品をありがとうございます!

ご感想御礼 未生(管理人)

2016/10/07(Fri) 00:46 No.273
 皆さま、拙作にご感想をありがとうございます〜。

アサギさん>
 延氾対決をお楽しみくださりありがとうございます〜。 氾さまは美しいものがお好きだろうとの妄想でございます。 美貌もさることながら、心映えも! 
「……臣下の躾が行き届かず、申し訳ない」 と詫びる陽子主上に惹かれたに違いないと信じております(笑)。
 そして普段漢前な陽子主上が可愛くなったり美しくなったりするシチュが 私の萌えでございます。ご寛恕くださいませ。
 アサギさんの延氾対決! 是非拝見しとうございます〜。 拙作が刺激になるとは光栄でございます。

篝さん>
 その無茶や無謀でさえも魅力になってしまう陽子主上でございます。 長く生きてこられた方こそ、そこが新鮮に見えて惹かれてしまうのではないでしょうか……。
 お疲れ陽子主上をハグして癒してあげてくださいませ。 物騒な面子は人払いで退けておきますから(笑)。

由都里さん>
 氾さまをお気に召してくださりありがとうございます〜。 私も「黄昏」を書いてからぞっこん惚れ込みました。 当時は書きにくい御方だったのですが……。
 トランスヴェスタイト、思わずググりました。 はい、私、氾さまの心はしっかり男性だと思っております。 美を追求するが故にあの恰好なのでしょう。過分なお言葉をありがとうございました〜。

さすがは氾様! 文茶さま

2016/10/08(Sat) 20:51 No.284
 やはり氾様の目は誤魔化せませんね(笑)。 苛々する尚隆を軽く躱しつつ、探りを入れていく氾様の方が一枚上手かな!?
 原作で尚隆の「お前の飼い主を呼んでこい」というセリフが好きなのですが、 動物繋がりで(笑)延主従が山猿なら氾主従は極楽鳥といったところでしょうか!?  きらびやかな中にも品性が感じられる美しい鳥という感じですね〜。
 口の重いお二人ですが、また対決再開で語り出されるのを楽しみにお待ちしております!

豪華な鞘当て 饒筆さま

2016/10/08(Sat) 21:11 No.285
 ……すごいよ陽子さん!! 十二国トップクラスのイケメン、 しかもR300クラスの名君お二人に鞘当てさせてるよ……!!
 おお女冥利に尽きると申し上げればよろしいのでしょうか。 一女御(のつもり)といたしましては畏れ多くて朱柱の陰から盗み見ることしかできません。
 もっと……もっとやってくださっていいのよ……(小声・笑)

 個人的にはこのお二方は根っこが似ている(つまり相手の手の内、出方がよくわかる) からこそ仲が悪いのかな〜と思ってみたり。
 傍観者としてはウフフと盛り上がる豪華絢爛な対決をありがとうございます♪

さすが… ネムさま

2016/10/09(Sun) 00:10 No.290
 もう10月なのに今だ蒸し暑さの残る関東ですが、このお二人の対決のお蔭で、 冷気が漂ってきました(笑)
 確かに王としては根は勤勉な延王が主旨を曲げたとあっては、 直接ご当人を見に来たくなりますよね〜、氾様も。 そしてこの二人を一瞬にして休戦に持ち込むとは、さすが!  本当に太陽のような威力です。
 北風と太陽のお話、楽しませて頂きました(何かが違う…)

ご感想御礼 未生(管理人)

2016/10/11(Tue) 00:09 No.374
 拙作にご感想をありがとうございました〜。

文茶さん>
 山猿と極楽鳥の対決、思わず想像してしまいました(笑)。 なかなか本音を語りたがらないお二方ではございますが、 またの対決を期待したいところでございます〜。

饒筆さん>
 鞘当て……! そう来たかという感じでございます(笑)。 陽子主上は大変でしょうが、柱の陰から見る分には面白うございますよね〜。
 実は似た者同士とは私も思います(笑)。

ネムさん>
 おお、蒸し暑い関東に冷気を漂わせましたか。さすがの名君お二方でございます(笑)。
 そしてさすがの陽子主上ですよね〜。北風と太陽、確かにそうかもです。
背景画像「NOION」さま
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