「管理人作品」 「祝11周年黄昏祭」

恭国女王@管理人作品第7弾

2016/10/09(Sun) 01:17 No.292
 皆さま、こんばんは〜。いつもレス及び拍手をありがとうございます。

 本日の北の国、最低気温は9.4℃、最高気温は16.4℃でございました。 一度ストーブを点けるともう手放せません(苦笑)。

 さて管理人、リクエスト作品第3弾を仕上げました。大遅刻でございますね(苦笑)。 よろしければご覧くださいませ。

恭国女王

2016/10/09(Sun) 01:18 No.293
「また、慶なの……!」

 鸞の声を聞き終えた供王珠晶は呆れて書卓に突っ伏した。しばらく一人で悪態をついた後、珠晶は下官を呼び、供麒に使いを出す。宰輔はこれまた珠晶が呆れるほどすぐに執務室に駆け込んできたのだった。
「――主上!」
「あら、ずいぶん早いお出ましね」
「火急の用とのことでしたので」
 急いでまいりました、と供麒は息を切らしつつ続ける。珠晶は苦笑しつつも女官に用意させた茶杯を差し出した。
「取り敢えず飲んで落ち着いて。話はそれからよ」
 供麒が受け取った茶を啜り、飲み終えたのを確かめて、珠晶は鸞の頭に触れた。鸞は明朗な男の声で先程と同じことを語り出す。供麒は大きく眼を瞠り、聞き終えて深く息をついた。珠晶もまた大きく嘆息する。

「まったく、慶にはまだそんな余裕はないでしょうに」

 短命な女王が三代続き、波乱の国と呼ばれている慶に新たな女王が立った。蓬莱より戻った胎果の新王は、伏礼を廃すという初勅を出し、半獣や海客の規制撤廃の勅令で断行した。しかし、その治世はまだ二年、他国に助力する地力はないだろう。
 珠晶は以前景王より親書を受け取ったことがある。供王の御物を盗んで逃げた芳国元公主の減刑を願う内容だった。あのときも珠晶は呆れたものだ。しかし、自ら罪を贖いに戻ってきた元公主は毅然としていた、との報告を高岫の街から受け、珠晶は景王に関心を持ったのだ。

「ですが……」
「そうね。自分には無理だから、延王に協力を申し入れた。そこは評価するわ」
「では……」
 でも、と珠晶は供麒の言葉を遮る。

「諸手を挙げて協力することではないわね」

 雁から鸞がやってきた。延王の親書の内容は、行方知れずとなった泰麒捜索への協力要請。これだけでも前代未聞のことだというのに、発端は、戴国将軍の嘆願を容れた景王が延王に助力を依頼したということ。
「ですが……」
「そうね、雁が泰麒捜索の必要性を認めたということよね」
 北の大国雁は五百年の治世を誇る。それだけ長く国を守る王は、情に流されたりはしないだろう。
「もっと情報がほしいわね……」
 思案しつつ、珠晶は慎重に言葉を選び、鸞を返したのだった。

 その後、詳細な情報は意外なところから齎された。奏南国太子が霜楓宮を訪ねてきたのである。諸国を放浪し、時に有益な情報を伝達する太子はいつもの如く爽やかな笑顔で現れ、此度の詳細を伝えた。
 巧と戴が荒れ、柳が危うく、慶も新王が立ったばかりという現在の状況では、雁一国の負担が大きいこと。その雁からの要請であること。景王と延麒が蓬山に問い合わせた結果、各国協力は理に触れないこと。それは蓬山から直接奏を訪ねた延麒からの説明だということ。

「というわけで、蓬莱は胎果に任せて、うちは崑崙を探すことにしたよ。協力してくれるよね」

 利広は爽やかな笑顔で奏の意志を告げる。珠晶は深い溜息をつきつつ同意したのだった。

 大国奏の太子を見送り、珠晶は物思う。独立不羈を尊び、互いに干渉しない国同士が協力してひとつのことを行う。今までになかったことを提唱する胎果の女王は同じく胎果の延王を動かした。雁が動けば奏も動く。奏が動けば恭も協力せざるを得ないし、同じく誼の深い才も同意するだろう。

(延台輔によると、景王が延王を論破したそうだよ)

 うちの連中も興味津々だよ、と続け、利広は楽しげに笑った。嘆息しながらも、珠晶はまだ見ぬ景王に思いを馳せる。十六歳で玉座に就いた、胎果の女王。いつか、会って話をしてみたい。そう思い、珠晶は唇を緩めた。

2016.10.08.

後書き

2016/10/09(Sun) 01:22 No.294
 「恭国女王」をお届けいたしました。  独立不羈を尊ぶ少女王は最初は乗り気じゃなかったのではないかな、との妄想でございました。お楽しみいただけると嬉しゅうございます。  ラスト1日、皆さまの素敵な黄昏作品を最期までお待ち申し上げております〜。

2016.10.08. 速世未生 記

あああ…! 由都里さま

2016/10/09(Sun) 23:56 No.313
 珠晶ちゃんが「いかにも」という感じで素晴らしいです。 わかる、彼女なら絶対こう言う…とひたすら頷いていました。 そして最年少で玉座についた自分のことは棚上げした(笑)最後の一文がいいですね!
 小説ですがイメージ画像がありありと浮かんできてもう眼福です…。 ラストスパートお疲れ様でした!!

妄想が膨らみます ネムさま

2016/10/10(Mon) 23:09 No.354
 第一声の「また」に様々な想いが入っていると思います。
 珠晶のことだから、王様になってから天の理やら何やら、いろいろ勉強したんでしょうね。 でも全否定せず、きっちり情報収集して考えるところは、さすがです。
 この二人の少女王が直接出会った時、思い掛けない新企画が立てられそうで面白そうですね (そして、あの二人が働かされると楽しいです ^m^)

ご感想御礼 未生(管理人)

2016/10/11(Tue) 00:43 No.377
由都里さん>
 珠晶を「いかにも」と言っていただけて嬉しく思います〜。 いやぁ、「歳が近い女王」誕生を喜んでいるのですよ、 大目に見てあげてくださいませ(笑)。
 読んで画像が浮かぶような文章を書くことは目標のひとつでございます。 嬉しいご感想をありがとうございました!

ネムさん>
 この「また」は動かせない一文でございました。想いを感じてくださり嬉しゅうございます。 陽子主上とタッグを組むと最強でございましょう。殿方は震えあがるかも(笑)。
背景画像「NOION」さま
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