「投稿作品」 「祝11周年黄昏祭」

滑り込み小ネタです 饒筆さま

2016/10/09(Sun) 10:37 No.296
 大変遅くなりましたが、小ネタ劇場Aがようやく書けました…… ってもう最終日じゃないですか!(一人ボケツッコミ)

 深夜に書いた正味一時間半クオリティ&各キャラがもれなく崩壊しておりますが、 楽しければいいよと言ってくださる御方はどうぞ笑い飛ばしてくださいませ。

小ネタ劇場A「主従は見た!」

饒筆さま
2016/10/09(Sun) 10:40 No.297
原作下巻 廉麟の激白シーンより
<原文一部引用>
  王との別離は身体を裂かれることだ。
 「国のため、民のためにあるのは、むしろ王です。私たちはその王のためにあります」
  廉麟は顔を覆う。
 「王のものなんだもの……」

 さて。この激白シーンに各主従が居合わせたら、どうなるでしょう……?

@延主従の場合

 延王は涙を零す廉麟の肩に手を置いて労ってやりながら、ニヤリと口の端をあげて我が半身を振り返った。
「……だ、そうだぞ。六太」
 しかし、延麒は円卓にぐったりと身を伏せたまま動かない。
「ふうーん……」(100%聞き流しスタイル)
 さらに六太は主に一瞥もくれず、爪の垢をちまちま掃除し始めた。延王は深く嘆息する。
「ところ変われば麒麟も変わるもんだな」
「そりゃそうだろ」
 フッ。延麒はほじり出した爪の垢を吹き飛ばす。延王はそれ以上の会話を諦め、廉麟がもう一度蓬莱へ旅立つのを見送ってやった。
 次いで、手近な椅子に腰かけ、置き去りになっている蓬莱の瓦版を広げる。
 乾ききった沈黙が辺りを支配した。
 ……しばし後、延麒が不意に顔をあげる。
「――なあ尚隆、これから街へ飯食いにいかね?」
「ああ……そうだな」
 延王は瓦版を閉じる。そういや腹が減ってきた。
「俺、精進ラーメンが食べたい」
「ああ、寺町のラーメン屋か?あのネギの多い店」
「そうそうソコ!」
 長い長い腐れ縁だ。説明など無くとも大抵のことは通じる。二人は同時に腰を上げる。
「行くぞ」
「はいよ〜♪」
 口笛ひとつで、マイ・スウグが飛んで来た。

 結論:延主従の反応=熟年夫婦(一見枯れていますが絆は最強)

A氾主従の場合

 延王がほろほろ泣き出す廉麟を慰めていると、一度は去ったはずの氾麟が戻って来た。
「見―ちゃったっ!見たわよ、尚隆!あなた、廉麟を泣かせたわねぇ♪」
 先程とは一転、明るい紫の瞳がキラキラ輝いている。まるで、いじめっこが楽しいオモチャを見つけた顔だ。延王は憮然と答える。
「俺は別になにも――」
 その声を遮るように、観音扉が優雅に押し広げられた。
「まったくじゃ。わが嬌娘だけでなく廉麟まで泣かすとは、おお、悪い猿だこと」
 しゃらり、と銀簪を揺らしながら現れた氾王がわざとらしく嘆息する。
「じゃから、猿の後宮には誰も寄り付かぬのじゃ」
「ねーっ。淋しい話ねーっ」
「寄り付かないのではなく、俺が入れていないんだ。ほっとけ!」
 延王は抗弁を試みるが、誰も聞いちゃいない。
「なんで帰って来た?」
「櫛を忘れたの〜(べーだ!)」
 氾麟はくるりと主を振り返って極上の微笑を浮かべる。
「ねえ主上、ご存じ?わたくしだって、身も心も主上のモノなのよ♪」(小悪魔)
「そうかえ?嬉しい言葉だねえ梨雪」(麗しのにっこり返し)
「言葉だけじゃないわ。本当にホントのことなのよ?」(胸元にすり寄る)
「無論知っておるよ」(ふふふ愛い仔じゃ・頭なでなで)
「やだぁ〜それだけじゃヤ〜ダぁ〜!お願い主上、もっと喜んで♪ねえねえ」(べったり)
 延王は呆れ返り、一言も発することなく堂を辞し、後ろ手に扉を閉めた。

 結論:氾主従の反応=関わりたくない系リア充

B景主従の場合

 実は終業あがりの陽子と出くわし、景麒も再び蘭雪堂へ戻ってきていたのだが――なんとなーく入りずらい空気を感じて、二人は朱柱の陰に並んで延王と廉麟の会話をこっそり聞いていた。
「……だ、そうだ。景麒」
 廉麟の激白を聞き、陽子はからかい半分で囁いてみる。
 しかし返事はない。(ムッ)
 陽子がジロリと睨み上げれば、景麒も同じくジロリと見下ろしてきた
「聞いていたか?麒麟は王のモノらしいぞ?」
 景麒はただ立ち尽くすばかりで、反応すらない。(カチン)
「私のモノであるのが嫌なら、今すぐ蓬山に返品してやろうか?」
 陽子が苛立たしげに問う。景麒はひとつ嘆息してから、やっと答えを返した。
「ワタシモシュジョウノモノデス」(カタコト)
「もうエエわ!!!」
 陽子の華麗なアッパーカットが半身の顎に突き刺さった。

 結論:景主従の反応=どつき漫才

<番外編>供主従がこの話を聞いたら

 廉麟の名言は虫の知らせ…ではなく、使令の知らせで崑崙を彷徨う供麒の耳に入った。
「麒麟は王のもの、か……廉台輔は良いことをおっしゃるね」
 見慣れぬ空を眺める。青は青でもこの青は恭国の青とはまるで違う。
「しゅじょう……」
 朧な仮身を吹き抜ける風が胸に沁みる。
――ああ主上!壮健なのは間違いないでしょうが、いったい如何お過ごしなのでしょうか……!
 猛烈に里心がついてしまった。
 それでも供麒は泰麒のためにと一歩踏み出したものの、やはり後ろ髪を引かれて振り返り、気が付くと遮二無二霜楓宮を目指して駆けていて――
 息せき切って御前へ戻った途端、愛しい主から雷撃のような叱責を喰らうのだった。
「ハア?!手ぶらで帰って来た?!何してんのよアンタ!泰麒は無理でも、役に立ちそうな道具、食べられる草木、珍しい書でも持ち帰っておいで!!!」(今すぐもう一回行ってこーい!)

 結論:供主従の反応=はじめてのおつかい大失敗


<それでは、おあとがよろしいようで……了>

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