「管理人作品」 「祝12周年十二祭」

延と景@管理人作品第2弾

2017/09/19(Tue) 22:53 No.72
 皆さま、こんばんは〜。いつも祭にご投稿及びレス、拍手をありがとうございます〜。

 台風18号タリムが通り過ぎた北の国、今日は雷雨でございました。 いやはや、台風一過の快晴とはならず、驚きましたね〜。
 因みに本日の最低気温は15.3℃、最高気温は24.1℃でございました。 今時期にしては高いですね。

 さて、管理人は漸く第2弾を仕上げました。 しかも御題昇華ではなく連鎖妄想でございます。 絶不調、開き直って書けたものから出してまいりますね。
 由都里さん作#36「幽玉卮」からの連鎖でございます。 尚陽妄想につき、苦手な方はご注意を。

延と景

2017/09/19(Tue) 22:57 No.73
「――酔わない、じゃなくて、酔えない、の?」、

 左から密やかな声がする。そうだ、と前を向いたまま簡潔に答えると、苦笑を含んだ声が続けた。

「――これと……同じようなものかな」

 声に惹かれて左を見れば、隣国の女王は己が剣に手を伸ばしていた。そのまま少しだけ刀身を覗かせる。主にだけ幻を見せるという美しい剣は、その刀身に淡く光を灯した。ふっと笑い、女王は刀身を鞘に収める。盃と同じ翡翠色の瞳に自嘲じみた笑みが浮かんだ。己も唇を緩め、尚隆は玉卮をぐっと呷る。

 注いだ酒は一晩の間無くなることがなく、酔うと故人の幻が見えるという卮。人を惑わすという点では、隣国の宝重と変わりがないのだろう。しかし、尽きることがない酒をいくら飲んでも、延王尚隆が酔うことはない。だからこそ、言ってみたいこともある。尚隆は盃を卓に置き、翠玉の瞳を真顔でじっと見つめた。

「お前が、酔わせてくれるか?」
「あなたが、それを望むなら」

 予想に違わぬその応え。尚隆は笑いを噛み殺す。が、怒声が上げられることはなかった。尚隆はゆっくりと身体を倒し、柔らかな膝に頭を載せる。少し見開かれた翠の宝玉に笑みを送り、尚隆は低く囁いた。

「――酔った、かもしれぬな」

 言って眼を閉じる。空気がふわりと和らいだ。細い指先が尚隆の髪を一房掬う。

「後で話を聞かせて」

 優しい声が微かに聞こえる。小さく頷いて意識を手放した。

 さあ、現れるがいい。今宵こそ恨み言を聞いてやろう。

 ぼんやりと浮かび上がる影が、尚隆を苦しめることはなかった。

2017.09.19.

後書き

2017/09/19(Tue) 22:58 No.74
 由都里さんの「幽玉卮」を拝見してほぼワンライで書き流しました。 状況は全く解りません。削ぎ過ぎたかな〜と少し足してみましたが、 どうやらかの方はこれ以上語りたくないようでございます……。
 由都里さん、素敵な作品に訳の解らない連鎖妄想文をつけてしまってごめんなさい。 萌えをありがとうございました。

 皆さまの素敵な作品をまだまだお待ち申し上げておりますね〜。

2017.09.19. 速世未生 記

なっ!!? 由都里さま

2017/09/20(Wed) 00:23 No.76
 「ひえええええ」というのが、この小説を読んだ第一声でした。 私の妄想がこんなにしっとりとアレンジされている…!?  ……ていうか私、こんな高尚なネタ描きましたっけ…?
 相変わらず仲睦まじいお二人を書いて頂けて、私は幸せを噛みしめています。 まさか連鎖して頂けるとは思いませんでした。ひえええええ
 この玉卮、本当に謎が多いですね〜(自分で作っておいてよく言う)  尚隆は果たして望む故人に遭えたのか、気になるところです。 まあ、誰に会っても最終的に陽子さんが受け止めてくれると思うんで 心配はないですかね(笑)

ひいいいい…(爆死) 篝さま

2017/09/20(Wed) 21:52 No.81
 確かに由都里さんの作品を初めて拝見した時に、「酔わない」のではなく「酔えない」 という箇所には私も「おっ? おっ?」となっておりましたが、 未生さまの手腕によって、斯くも妖しくも切ないお話になるとは…! 連鎖妄想万歳!!
 ええ、ええ。幽玉卮のお酒には酔わないけれど、 陽子主上という美酒にはあっけなく陥落でございますね。むふふ…。

 は〜〜〜、お腹いっぱいです。素敵な作品をありがとうございました!

おおおおお 饒筆さま

2017/09/20(Wed) 22:22 No.83
 なるほどぉ! 水禺刀を携えた陽子さんと一緒なら安心して酔えますね!  悪霊が現れたら斬ってくれそうだし!
 ……とお膝をポンした私の色気の無さは一体……(壁に手をついて反省)

 あと、恨み言を言って欲しいのは尚隆氏の方だったりして――とも思いましたね。 きっとどの故人たちも尚隆氏を責めたりはしないはず……あっ!  一人思いついた! 「あ」がついて「つ」が続いて「ゆ」で終わる人! (答え言っていますね・笑)
 故人たちに会えば下手すると(過去が)恋しくなったり惜しくなったりするから会えない (酔えない)のかなあ……?

 しっぽりと萌えの広がる一コマをありがとうございました。

奥深い 文茶さま

2017/09/21(Thu) 20:27 No.86
 宝重とは、総じてままならないものなのだろうなと思います。 使いこなせているようで、どこかしら主を惑わす要素を含んでいるのでしょうね。 試すと言ってもいいかもしれない。うーむ、奥が深いですねぇ......。

 陽子さんの膝を枕にしたら、穏やかな夢しか見ないんじゃないかしら!?  羨まし過ぎるぞ、この〜!(笑)
 お二人が幸せそうで嬉しいです///。ありがとうございます!

よかった ネムさま

2017/09/23(Sat) 00:07 No.96
 陽子の返答がとても素敵でした。
 尚隆が今まで酔えなかったのは、亡くなった人々に対して常に緊張と言うか、 思い入れが強すぎるのかもしれませんね。 それが解けて、ようやく酔えたーもちろん恨みを言う人も多いでしょうけれど (王だからね)笑いかけてくれる人もいる、 そんなあるがままを受け入れられるようになったのなら、よかったと思います。
 すてきな連鎖妄想を楽しませて頂きました!

膝枕 ひめさま

2017/09/23(Sat) 23:33 No.104
 さすが、管理人さまの神髄発揮ですね!

 饒筆さんのおっしゃる「あ」……がつく方には陽子さんも会ってみたいのではないか、 という気がします。尚隆から話を聞くだけじゃなく、ですね。 一緒には酔えないんですかね〜。雁の宝重ですから延王だけなのかしら。 陽子さんだと酔うのはやいですよ、きっと(笑)。

ご感想御礼 未生(管理人)

2017/09/25(Mon) 13:34 No.123
 皆さま、拙作にご感想をありがとうございます。レスが遅れてごめんなさいね〜。

由都里さん>
 即レスありがとうございました。眠れなくしてしまってごめんなさいね(笑)。 でも、投下してドキドキしておりましたので、楽しんでいただけてほっといたしました。
 ほんと妄想を刺激する謎の多い玉卮でございますね〜。 現れた故人はお二人の秘密ということにしておいてくださいませ。

篝さん>
 「酔わない」ではなく「酔えない」って引っかかりますよね!  今回の萌えポイントでございました(笑)。お褒めいただき嬉しゅうございます〜。

饒筆さん>
 妄想を邁進させるご感想をありがとうございます。 私もまず頭に浮かんだのは斡由、その次は尚父でございました。 かの方の口が重くて、結局謎のままでございます……。

文茶さん>
 ほんとうに、水禺刀然り、華胥華朶然り、 宝重とは王を試すものが多いような気がいたしますね。そういう意味で、 この玉卮も宝重らしい宝重のように感じます。
 はい、陽子主上の膝枕で見た夢は穏やかだったのではないでしょうか。 お楽しみくださりありがとうございます〜。

ネムさん>
 人の上に立つ者は色々なものを超えていかなければならないのでしょうが、 個人の恨み言まで引き受けるのは荷が重いと思いますね〜。 己の力量を知るが故に酔えなかったのかも、との妄想でございます。 よかった、とのお言葉、私も嬉しく思いました。ありがとうございます。

ひめさん>
 物凄いお言葉をいただいてしまいました(笑)。ありがとうございます〜。 久々の一気書きをお楽しみいただけて嬉しゅうございます。
 はい、雁の宝重ゆえに延王のみ見ることができるだろうとの妄想でございます。 かの方の語りを陽子主上も楽しむことでございましょう。

 今回ずっと題名に悩みました。 結局、本文でかの方が一度も陽子主上を「伴侶」と呼びませんでしたので、 そういうことなのか、とつけた次第でございます。お粗末さまでございました。
背景画像「素材屋 flower&clover」さま
「管理人作品」 「祝12周年十二祭」