延麒の思惑＠管理人作品第１弾

　祝！　サイト開設13年！
　本日の北の国、最低気温は１９．７℃、最高気温は２２．１℃でございました。 雨上がりで多少湿度の高い一日でございました。 そろそろ風も冷たくなってまいりましたね〜。

　さて、９月１日になりました。拙宅はなんと13周年を迎えました。 ご来場くださる皆さまのお蔭でございます。ありがとうございます〜。

　今年はアンケートで募集いたしましたとおり、 定番主従から意外な組み合わせまでどんとこい！　 の「相棒な二人」のお話を書いてまいりたいと思います。 これから約１ヶ月、どうぞ「祝13周年相棒祭」にお付き合いくださいませ。 皆さまにお楽しみいただけると嬉しゅうございます。

　投稿の見本を兼ねて管理人作品第１弾をお送りいたします。 よろしければご覧くださいませ。

• 登場人物　　六太・陽子
• 作品傾向　　ほのぼの
• 文字数　　1221文字

延麒の思惑

　ふらりと高岫を超えてしまったのは、若き隣人が恋しくなったからなのかもしれない。延麒六太は久々に訪れた隣国の禁門で、ひとり唇をほころばせるのだった。

　賓客の唐突な訪れにもすっかり慣れている慶主は、多少呆れながらも筆を置いて六太の相手をしてくれた。執務室の書卓に積まれた書簡は決裁済ばかり、これはいいときに到着したようだ。国主が手ずから淹れてくれた心尽くしの茶を啜り、小卓に腰かけた六太はご満悦であった。やがて。

「水禺刀。碧双珠。蠱蛻衫。鴻溶鏡。呉剛環蛇」

　己も湯気を立てる茶杯を手にした慶主が呪文のように唱え上げたもの。それは須らく宝重だ。きっとまた面白いことを考えているのだろう。並べられた茶菓子を眺め、どれを選ぶか思案している六太に、景王陽子が問いかける。

「前から気になっていたんだけど」
「んー？」
「雁に宝重ってないんですか」

　きたきた。そうきたか。六太は茶菓子から眼を離さず僅かに唇を緩める。泰麒捜索の折、範や漣は宝重を惜しげもなく披露した。この慶にも国主が愛用する立派な剣や玉がある。対して雁は主従が知恵と身体を差し出しただけ、陽子が疑問に思っても不思議はない。六太は軽く事実を答えた。

「あー、きっとどっかにあるぞ」
「え!?　どんなものなんですか」

　慶主は素っ頓狂な声を上げた。陽子ならそう来るだろう。想像の範疇だ。六太は菓子を選び終え、躊躇なく齧りつく。

「どんなものって言われてもなー」
　答えに困る。すると陽子が焦れて叫んだ。
「延麒！」

　六太は陽子に眼を向ける。慶主は拳を握って身を乗り出していた。六太は尚も事実を述べる。

「あ、尚隆には内緒だぞ。大昔に売っ払ったことになってるからな」
「なんですか、それ」

　陽子は訝しげに首を傾げる。六太はしてやったりと笑って種を明かした。

「あいつの登極当時、雁は貧乏でな。金目の物は全部売っちまったんだが、宝重もついでにな」
「えー！　なんて罰当たりな」

　至極真っ当な隣国の王の驚きの声に、雁州国宰輔延麒六太は肩を竦めて同意する。

「だろー？」
「あれ？　でも、どこかにあるんですよね……？」

　さすが陽子、頭の回りが速い。首を傾げて訊ねる慶主に六太は満足しつつ答えを与えた。

「雁の宝重はな、手放しても戻ってくるんだよ」
「――！」

　景王陽子は絶句した。六太も当時は驚いた。どさくさに紛れて売り払ったから、他の誰も知らない。というか、梟王が荒らした王宮に宝重を詳細に知る者は残されていなかったのではないか。何せ遠い過去のこと、六太の記憶も朧げだ。固まる陽子に六太は念を押す。

「な、尚隆には言うなよ。悪巧みに使われたら、おれ、失道しちまうからな」

　味を占めて何度も宝重を売られてしまえば延麒六太の身が危ない。聞いた陽子は頭を抱える。六太の半身をよく知るが故だろう。

「うわぁ……」

　雁州国の国家機密を聞かされた慶主の呻きを聞きつつ延麒六太は茶菓子を堪能する。陽子と秘密を分かちあうのもまた一興。そんな悪戯めいた想いを慶主が知ることはないのだった。

2018.08.31.

後書き

　第１弾はツイッターでアンケートを取った結果、六太のお話を書くことになりました。 相棒は陽子主上でございます。 なかなか降りてこなくて焦っておりましたが、昨年の祭を見直すと、 六太が嬉々として語り出しました。

　「十二国で十二題」其の一「宝重」の六太視点でございます。 この二人、ちょっと兄妹っぽいところが管理人的ツボでございます。 皆さまにもお楽しみいただけると嬉しゅうございます。 リクエストありがとうございました〜。

　さてさて皆さまの素敵な相棒な二人をお待ち申し上げておりますね！

2018.09.01.　速世未生　記

• 主従になると一番仲良くなりそう！ （ほのぼの・陽子・六太）

13周年おめでとうございます！　饒筆さま

　素晴らしいですね、13周年！　重ねておめでとうございます☆
　そして、相棒祭を楽しみにお待ちしておりました！　 開催してくださり、ありがとうございます。

　さて、六太クンと陽子さんの兄妹感、わかります、めっちゃわかります〜（笑）　 ほっこり可愛いですよね。
　生真面目で正直者な陽子さんがこの秘密をどこまで隠しおおせるかが、 ちょびっと見物だと思います（あはは）　 もしかして、あのピンクの髪巾が宝重だったりしたらイヤだなあ。

　楽しいオープニングをありがとうございました。 これからひと月、よろしくお願いします！

おめでとうございます！　文茶さま

　13周年おめでとうございます！　 長くサイトを続けてくださり、そして楽しいお祭りを開催していただき、感謝感謝です！

　わーい、陽子&六太コンビだ♪
　陽子さん、えらいな国家機密を抱えてしまい、聞かなきゃよかったと思っているのでは（笑）　 尚隆は宝重に頓着しなさそうなんで、 どんなに素晴らしいものが手元にあったとて扱いが雑そうですねぇ^^;
　六太と陽子の兄妹感好きです。 政務関係では六太がお兄さんなんだけど、 日常では逆に弟で陽子に甘えるというシチュも私的にツボでございます（笑）

　お祭り初っ端からほのぼのして顔が緩んでしまいました〜。 楽しいお話をありがとうございます！　これから1ヶ月間楽しませていただきますね^ ^

おめでとうございます!!　ネムさま

　ついに１３年目に突入ですね。 未生様には、いつも素敵なお話と遊ぶ場所を提供して頂き、感謝し切れません。 これからも未生様のご活躍とサイトのご発展をお祈りしております　m--m

　さて、相棒一組目は、陽子と六太ですね。私もこの組み合わせが大好きです！　 「黄昏」で尚隆に泰麒救出を頷かせた時のコンビネーションは見事でした（笑）
　思い返せば六太は人（国含む）の世話ばかりして、相方の尚隆は通常おちゃらけているし （決める時は決めるけどね）、 こんな風に国家機密(!)をこそっと共有できる相手が欲しかったのかもしれませんね。
　見掛け姉弟、内実兄妹のこのコンビ、末永く慶と雁を支えて下さい（エール）
　楽しいお祭第一弾、ありがとうございました!!

祝！　サイト開設13年！　ひめさま

　13年……まことにおめでとうございます。 そしてワタクシもたくさん遊ばせていただき感謝申し上げます。

　この頃はスマホちゃんで覗かせていただくことも覚えたのですが、悲しいかな、 何分にも活字が小さくて（大きくしても）なかなか思うようにはまいりません。 やはりパソくんのものですね〜。しかし、長時間はこちらも辛い（苦笑）。

　揺れる気持ちと折り合いをつけながら「相棒祭」楽しませていただきたいと思います。 どうぞよろしくお願いいたします。

開設13年おめでとうございます！　由都里さま

　サイト開設13年おめでごうございます！
　…生まれた赤ちゃんが中学生に上がる年月、 こんなに長い間継続して運営を続けてくださってありがとうございます。 おかげでいつも楽しませていただき、生活の糧となっております。

　私、夢幻夜話の六太くんと陽子、大好きです。 そしてみなさんもやっぱりお好きなんだなと思いました。 ひそかに書いてほしいな〜と思っていたら見事第一弾で出してくださったので、 「あれ？　私リクエストしたっけ？」と驚いたほどです(笑)

　今回も「近所のお兄ちゃんと仲良くしもらってるお嬢ちゃん(ただし見た目は逆)」 のような感じの仲の良さを拝めてよかったです(*´ω｀)

　次の作品も楽しみにしておりますが、 震災で大変かと思いますのでどうかご無理をなさいませんよう。

ご感想御礼　未生（管理人）

　皆さまの素敵作品にレスして満足してしまいました。遅くなって申し訳なく。 13周年に寿ぎをありがとうございました！

饒筆さん＞
　このふたりの兄妹感にご同意くださりありがとうございます。 確かに陽子主上が隠しきれるかどうかは謎でございますね(笑)。

文茶さん＞
　知られざる雁国国家機密！　とんだ藪蛇でございますよね(笑)。頑張れ陽子主上！　 そうそう、政務時は兄妹、普段は見かけどおりの姉弟というのにも萌えます。

ネムさん＞
　私も原作「黄昏〜」でのこのふたりの遣り取りが大好きでございます。 無駄に妄想を刺激されました(笑)。 国家機密を共有できる仲のふたり、いつまでも仲良くしていただきとうございます。

ひめさん＞
　この13年でひめさんも進化を遂げていらっしゃいますよね(笑)。 長い間のお付き合いありがとうございます。 これからも無理のない程度にお付き合いよろしくお願いいたしますね！

由都里さん＞
　生まれた赤ちゃんが中学生！　衝撃的でございます(笑)。
　そうですね、このふたりの絡みは結構書いてまいりましたね〜。 リクエストをいただいたときは嬉しゅうございました。 由都里さんにもお気に召していただけてようございました！
　はい、大分落ち着いてまいりましたので、そろそろ次をと考えております。 気長にお待ちくださいませ〜。