杖身の観察@管理人作品第4弾
2018/10/13(Sat) 20:49 No.138
皆さま、こんばんは〜。いつも祭にご投稿及びレス、拍手をありがとうございます。
本日の北の国、最低気温は11.0℃、最高気温は18.3℃でございました。
寒く感じるでございますが、まだひとケタではございませんね〜。
さて、投稿最終日でございます。管理人は3つ目のリクエストを仕上げました。
あまり相棒らしくはないのですが、珠晶の杖身たちを書いてみました。
- 登場人物 杖身たち・珠晶・少年
- 作品傾向 ほのぼの?
- 文字数 1195文字
杖身の観察
2018/10/13(Sat) 20:52 No.139
そろそろ時間か。屈強の男たちは揃って腰を上げる。陽射の傾いた連檣の街、彼らの行先は庠学だ。相家の末の令嬢を迎えに行くのである。
彼らは連檣の富裕な商人、相如昇に雇われた杖身だ。家公とその家族を護るのがその仕事。王が斃れて二十七年になる恭州国では、陽が暮れると首都でさえも妖魔が出るのだ。
相家の壮麗な大門を抜け、三人の男たちは油断なく歩を進める。不意に悲鳴が響き、男たちは頷き合って広途へと駆けつけた。夕暮れ時の雑踏が右往左往している。妖魔だ、と叫ぶ声を追うと、その先には小さな妖魔の群れがいた。蟲と呼ばれる妖魔の小物はそれだけならば害はない。しかし、放っておくと大物を呼ぶとも噂される。杖身たちは連携して涌いて出た蟲を仕留めたのだった。
「お嬢さんを迎える前でよかったな」
一人がぽつりと呟いた。確かに、と男たちは首肯する。杖身が三人付くのは、こういうときに令嬢を護りつつ敵を退治するためだ。蟲は大した妖魔ではないが、警護対象を危険に曝すことはない方がよい。
「――お嬢さんが待ってるな」
急ごう、と杖身たちは駆け出した。
さほど遠くない庠学の大門で主家の令嬢は待っていた。横にいる少年と押し問答をしているようだ。いつものことに、杖身たちは微かに唇を緩めた。
待たせたことを謝ると、令嬢は待ちかねたように門から身を起こした。そして驚いたように声を上げる。杖身たちは改めて自分たちの皮甲に血が散っていることに気づいた。街に現れた蟲を仕留めたと説明すると、令嬢は眉を顰める。が、急ぐように促す彼らに頷いて、石段を駆け下りてきた。しかし。
珠晶、と再び少年が声をかける。いつものことながら今日は粘るな、と杖身たちは密かに目を見交わした。少年は、ついて行ってやろうか、と続ける。警護役が目に入ってないかのようなその言に、令嬢は呆れて振り返った。噛んで含めるように諭す令嬢に、少年は尚も食い下がる。続けられた言葉に、彼らもまた納得した。
今日で最後。
粘る少年の本心も令嬢に届くことはなかった。冷淡な応えとともに令嬢は歩き出し、振り返ることもない。杖身たちがちらりと目を遣ると、少年は切なげな溜息をついて令嬢を見送っていた。
気の毒に。
男たちは内心そう思う。自分たちが護る令嬢は聡明な少女だ。連檣でも有名な相家の令嬢に憧れる者は多い。通常であれば家から外に出ることもないお嬢さまだけに、学校でもなければ声すらかけられないだろう。
実は杖身たちが除ける虫は妖魔だけではない。それでも、男勝りで口達者な令嬢に果敢な挑戦を繰り返す少年を、彼らが害虫として排除することはなかった。冷たくされても諦めない様は天晴で、密かに応援すらしていたのだ。無論、本当に不埒な真似をするならば成敗するだろうが。
令嬢が庠学に通うのは、今日が最後。小さな背中を護るという役目は全うした。けれど、一抹の切なさを抱きつつ杖身たちは相家の大門を潜るのだった。
2018.10.13.
後書き
2018/10/13(Sat) 20:54 No.140
「杖身の観察」をお届けいたしました。
あまり相棒らしくはないのですが、楽しく書かせていただきました。
リクエストありがとうございました。
さて、あと3時間でございます。あなたの駆け込みをお待ち申し上げております(笑)。
管理人もあとひとつ頑張りますね!
2018.10.13. 速世未生 記
- マニアック系で、珠晶の杖身達はいかがでしょうか。
三人居ますが。彼らが結構好きなのです。
元ネタが少ないからこそ内容はお任せしたいです! (お任せ・その他・その他)
渋メン ネムさま
2018/10/14(Sun) 21:33 No.165
地味にカッコ良い杖身達に「ほぉ〜」と溜息が漏れました。
今回は蟲くらいで良かったけれど、大物が現れれば、
彼らは身を挺してお嬢様を守らなくてはいけない、つまり大怪我か死か、
という立場に置かれているのですね。
災いの芽をいち早く摘むプロの技、少年の想いを密かに応援する人間らしさ―
いやぁ、本当に渋い!
思わぬ素敵な相棒達を読むことができました。ありがとうございます!
チョイスが渋い! 饒筆さま
2018/10/14(Sun) 23:45 No.181
おお、あの杖身たちをリクエストなさるとは……チョイスが渋くて良いですね♪
確かにあの杖身たちは人間臭くてイイ人そうです。
少年を温かく見守ってくれたのは、実は、
お嬢さまにも少しは心温まる思い出を作って欲しかったから
(でも差し出がましいしな……)って感じかもしれませんね。
ほっこり、でも寂しい風の吹く一幕をありがとうございました。
やっぱり頼れる! そして、しょ、少年〜!! 黒井さま
2018/10/15(Mon) 00:23 No.189
ありがとうございます! へへ、実はリクエストしました。
凄い…リクエストが未生さんの作品になってる…! ありがとうございます!!!
あれ? 私、白兎と珠晶も描いて、このリクエストもして、図南好きなのか…?
(いや、好きなんですけど!)
あの場面の裏側が読めるとは!
そして、密かにファンなあの少年も出てくれるなんてさらに嬉しいです!!
息の合った屈強な男たちが、(排除対象!!)少年の恋を応援してるのが、
もう、たまりませんね! はー! そうだったのか貴方達〜!! わ・た・し・も!
皆さんのように感想が上手くまとめられないのですが、とにかく、エモかったです
…ありがとうございます。
ご感想御礼 未生(管理人)
2018/10/15(Mon) 00:51 No.191
ネムさん>
「地味にカッコよい」が沁みました。ありがとうございます。
そうですよね。
蟲だからすぐに退治できたけれど、
老師のように馬腹なんかに襲われてしまえば珠晶を護るために命を懸けるのですよね……
(しんみり)。
原作「図南」を読み直し、描写はないけれど、
杖身たちは少年が粘ってる時に黙って待ってるのですよね。つい妄想してしまいました。
恐らく身分違いの珠晶に果敢且つ解りにくいアタックをする少年に思うところがあったのでは、
と(笑)。
饒筆さん>
はい、私もリクをいただいたときは渋いと思いました(笑)。
この少年については以前饒筆さんが素敵なお話を書いてくださいましたよね。
少年の口説き方は少女には届かねえよという拙いものですが、周囲から見れば一目瞭然、
鼻っ柱の強いお嬢さんによく喰らいつくと感心していたのでは。
饒筆さんが仰る通り、珠晶にロマンスを提示する気も合ったかもですよね〜(笑)。
黒井さん>
おお、この渋いリクエストは黒井さんでしたか!
いやあ、書き始めたらするするいけました。
そうそう、
本来ならば排除対象である少年の不器用且つ果敢な挑戦は彼らの心を動かしたのではないかと
(笑)。
私も珠晶のあの対応は少年にはお気の毒と同情しております。
リクエスターにお楽しみいただけて嬉しゅうございました。
リクエストとご感想をありがとうございました!