会いたいときに
2007/08/31(Fri) 05:50 No.2
会いたいときに、あなたはいない。
切なさに胸が潰れそうな夜、かたりと小さな音がした。細く開けられた窓から滑りこむ大きな影。陽子は思わず駆け出して、突然現れた伴侶に飛びついた。
「そんなに歓迎されるとは思わなかったな」
軽く笑いながら、伴侶は陽子を抱きとめる。そのまま伴侶の首に腕を絡め、陽子はいつもなら口にしない一言を小さく呟いた。
「──会いたかったから」
「聞こえない」
意地悪な笑い含みの声には答えずに、伴侶の厚い胸に顔をつけた。朱に染まった頬を、見せたくなくて。ふ、と笑い、伴侶は陽子の頤を持ち上げる。
「──聞こえなかった」
じっと見つめられて、身体の力が抜けた。もう一度、と耳朶に吐息がかかる。思わず息を呑み、陽子は目を閉じた。そして、伴侶の逞しい肩に顔を埋めて、もう一度囁いた。
「──今、会いたかった」
会いたいときに、あなたと会えた。それがどんなに嬉しいことか、あなたは知らないだろう。胸に秘める想いを裏切らない一言を、伴侶は返す。
「会っているだろう」
くすりと笑いを零した伴侶は、陽子を抱く腕に力を籠める。そして、潤んだ瞳で見上げる陽子に、甘い口づけをくれた。
2007.08.31.
後書き
22007/08/31(Fri) 05:59 No.3
2周年ありがとうございます。
皆さまのリクエストを読みながら、にんまりしておりました。
即書きしてしまったものもあります。この「会いたいときに」もそのひとつ。
Fさま、妄想を呼び覚ますリクエストをありがとうございました♪
作者はラブラブ・甘々を書いたつもりなのですが、如何でしょうか?
2007.08.31. 速世未生 記
- いつもよりかなり健気で素直で可愛くて積極的な陽子さんと、
内心かなり嬉しいのに、つい何時ものように意地悪してしまう尚隆さまのお話を
ぜひお願いいたします。