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女王のご機嫌を直す一の方法@2周年記念リク第9弾

2007/09/16(Sun) 06:18 No.57
「萌え」をいただきましたので、一晩寝かせたものを出してみます。

※ 管理人の作品は全て尚陽前提でございます。

女王のご機嫌を直す一の方法

2007/09/16(Sun) 06:22 No.57
 麗しき女王は、今日もご機嫌麗しいとは言えない。故に、下官は書簡を置き、逃げるように退出していく。班渠はそんな様子を隠形しながら見守っていた。
「──暑いな」
 筆を置いて伸びをしながら、女王は物憂げに呟く。季節は晩夏である。班渠は、笑い含みに軽く答えた。
「涼しいところにいらっしゃればよろしいのでは?」
 輝かしい翠玉の瞳を見開いた女王は、にやりと笑って姿を見せぬままの班渠に問う。
「そんなこと言ったら、景麒に叱られるぞ。いいのか?」
「主上が仰らなければ分かりませんよ」
 飄々と応えを返す班渠に、女王は大笑いする。それからやおら筆を取上げ、猛然と仕事を片付け始めた。そして女王はさっさと関弓に向かったのだった。
 女王のお忍びを厭う主も、鬱屈する女王を前に右往左往する。それならば、女王を伴侶に任せてしまえばよいのに。班渠はこっそりそう思うのだ。無論、口に出すことはないのだが。
 雲海を渡りながら、女王の機嫌は目に見えてよくなった。堯天を離れるにつれて、暑かった空気も爽やかになっていく。玄英宮に着く頃には、女王は雁での計画を立て終わっていた。
「葡萄狩りに出かけましょう」
 延王の執務室に窓から侵入しながら、女王はにっこりと笑う。珍しく真面目に仕事をしていたらしい延王は、驚きもせずに口許を歪めて笑った。
「開口一番にそれか?」
「慶は暑いんです」
「──意味不明だな」
 そう答えつつも延王は呵呵大笑する。女王は花のように笑い、首尾よく伴侶を連れ出したのだった。

「慶はそんなに暑いのか?」
「ええ、逃げ出したくなるほどに」
 熟した葡萄に手を伸ばしながら、女王は澄まして答える。延王はくつくつと笑い、横目で班渠を見た。
「女王の逃走の片棒を担ぐとは、大胆だな、班渠」
「主上がお健やかに過ごされることこそが、慶のためでございますから」
 班渠はさらりと答えた。延王はにやりと笑う。
「──慶はよほど暑かったのだろうな」
「雁よりも温暖だとは思います」
 玄英宮に戻ったときの騒乱を想像し、班渠は嘆息する。延王は肩を震わせ、麗しき女王は葡萄を持ったまま首を傾げた。延王は女王の肩を抱き、満足そうに笑む。
「輝かしい太陽が、地に豊穣を齎すのだぞ」
「──あなたの言うことは、いつもわけが分からない」
 女王はぶつぶつと文句を言って口を尖らせる。班渠はくすりと笑う。慶の者の思いも延王と同じだ。しかし、慶の輝ける太陽である女王は、きっといつまでも気づかないのだろう。

2007.09.16.

後書き

2007/09/16(Sun) 06:34 No.58
 昨日、そろそろ班渠かな、と思いワードにざっと書き流しました。 ……イマイチ。なんだか気に入らない。でもどこを直せばいいか解らない〜。
 そんなとき、ピンポ〜ンとチャイムが鳴りました。なんと偶然、Aさまご来訪!  (※注・チャットシールでございます)
 Aさま、朝からお喋りに付き合ってくださってありがとうございました〜。
 私はこういう班渠が好きなのです♪ 皆さまにもお気に召していただけると、嬉しく思います。
 Aさま、リクエストありがとうございました!

2007.09.16. 速世未生 記

Good Job!班渠 です。 あすかさま

2007/09/16(Sun) 11:41 No.59
 未生様、素敵な班渠を御投下有難うございます。 みんなのため、主のため、そして、陽子主上のため、日夜班渠は駆け抜ける〜!  「Good job!」ご苦労様でした班渠君。
 こんなに人の心の機微を知り尽くした指令というのも、あまりいないのでは・・・。 未生様の書く班渠は、本当に気が利いていて、ユーモアを解して、愛嬌があって、大好きです。 また会えてとても幸せでした。

そして
>「──慶はよほど暑かったのだろうな」
>「雁よりも温暖だとは思います」
この会話の裏に含まれているものは・・・? などと、裏読みをしてしまいました。

「慶は暑い。」う〜ん!ただ暑いだけではないのですよね、きっと。
 この後、尚隆は、
「葡萄食べないんですか?」とたずねる陽子に
「お前が食べさせてくれるなら、食べてもいいぞ。」
とか何とか言って、皮を向いてもらって、食べさせてもらうのでしょうね。ラブラブですね!
 ついでに、陽子さんのことだから、
「班渠にも食べさせてあげるね」
何て言って、しっかり尚隆のやきもちオーラを浴びたりして〜!  妄想がどんどん膨らんでしまいます。
 未生様! 素敵な班渠をどうも有り難うございました。

妄想を誘うご感想をありがとうございました 未生(管理人)

2007/09/17(Mon) 05:19 No.64
 あすかさん、いらっしゃいませ〜。お気に召していただけて嬉しいです〜。 そして、深読みをありがとうございます!
 そうなんです、「暑い」のお話を書いていたら、例の如くずんずん長くなり、 収拾がつかなくなってしまったのでした。なので、全削除したんです(笑)。
 続きも想像してくださって嬉しいです♪ 妄想を刺激されてしまいました〜。
 そんなわけで、オマケの「延王のご機嫌を直す一の方法」を書き流しました。
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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