金波宮の平和な悶着
2007/10/02(Tue) 06:04 No.130
「──陽子はどこだ?」
「存じません」
「お前には分かるはずだが」
「主上が自ら姿を隠された場合は、私は捜さないお約束でございますので」
「──俺に教える気はないのだな?」
「それが主上のお望みならば」
内殿の入り口で、息詰まる舌戦が繰り広げられていた。女王の伴侶である隣国の王と、女王の半身である宰輔景麒である。物陰から様子を窺う女史と女御は、目を見交わした。
「陽子ったら、いったいどこへ行っちゃったのかしら?」
「──珍しく延王が訪問の日時を告げていらしたっていうのに、あれでは……」
女王の伴侶が訪れる時刻が近くなって、肝心の女王が行方を晦ました。無論、側近は慌てふためいて女王を捜した。大僕虎嘯と禁軍左将軍
桓魋を中心に、王宮内を大規模捜索中である。そんなとき、懸案の賓客が訪れてしまったのだ。
「──よりによって、台輔がお迎えに出てしまうなんて」
「浩瀚さまはどうされているのかしら」
祥瓊と鈴が密かに溜息をついた。二人が急ぎ禁門に向かったときには、女王の伴侶を疎む台輔が応対に出ていたのである。そのとき、後ろから抑えた声がした。
「──遅かったようだな」
「浩瀚さま」
「鈴、悪いが、私が呼んでいると台輔に告げてくれ。祥瓊は延王を頼む」
「はい」
二人は冢宰の命を受け、延王と景麒の間に割って入った。そんな様子を、いつの間にか現れた虎嘯と
桓魋が心配そうに見つめる。
「──大丈夫ですかね?」
「危険、ですよね」
「主上は?」
浩瀚の問いに、虎嘯と
桓魋は力なく首を振る。浩瀚は小さく嘆息した。
「まあ、延王の応対に慣れている二人に任せよう」
浩瀚が呟いたとき、素っ頓狂な声が響き渡った。
「あれ、みんな、どうしたんだ?」
「主上!」
手に見事な紅葉の枝を抱えた女王が突如姿を現した。唖然とする側近たちを尻目に、麗しき女王は満面の笑みを以って伴侶を迎えた。
「いらっしゃいませ、延王。お出迎えが遅くなってごめんなさい。探し物がなかなか見つからなくって」
「──見事な紅葉だな」
「ええ、あなたに見せたくて」
にっこりと微笑む女王に、不機嫌だった延王尚隆も大笑いする。そして、気の毒な側近たちは、呆然と立ち尽くすのみだった。
2007.10.01.
後書き
2007/10/02(Tue) 06:15 No.131
──大変お粗末でした。
最初は拍手に上げたお話を祭に上げようと思っておりました。
けれど、陽子視点で書くと、ちっともコメディにならなくて。
ちっとも終わらないし、しかも、最後は甘甘になってしまって……(恥)。
で、新たに起こしました。──如何でしょうか?
Kさま、ごめんなさい! いつもリクを外しているような気がいたします……。
けれど、リクエスト、ありがとうございました!
2007.10.02. 速世未生 記
- 陽子に振り回される尚隆たちが読んでみたいです。
金波宮の皆さんも含めての騒動(笑)などを書いていただけると嬉しく思いますvv
ありがとうございます! 未生(管理人)
2007/10/04(Thu) 06:01 No.133
空さん、いらっしゃいませ〜。
笑ってくださってありがとうございます。嬉しいです〜。
コメディは書こうと思って書けた試しがないので、自信がなかったのです。
祭も明日でお終いですが、最後までよろしくお願いいたします。
PCの調子が悪く、ネットに繋げないため、携帯からの投稿です。
文字が打ちにくい! 苛々します〜。復活したらまたお知らせにまいります。