「管理人作品」 「3周年祭」

雨の 庭院なかにわ @3周年記念リク第1弾

2008/09/02(Tue) 13:36 No.4
 お祭初日に御題を投下できなかった情けない管理人でございます。 遅ればせながら第1弾を投稿したいと思います。
 まずは桓魋かんたいからどうぞ!

雨の庭院なかにわ

2008/09/02(Tue) 13:42 No.5
 雨が降りかけていた。近道をしようと庭院を横切ったのは失敗だったな。桓魋かんたいはそうひとりごち、足早に歩く。
 ひと気のない庭院の中程まで辿りついたとき、桓魋は先客がいることに気づいた。鮮やかな紺青の髪。それは祥瓊だった。俯き加減に佇む女史は、雨が降っていることにも気づいていないようだった。
「祥瓊、濡れてしまうぞ」
 突然かけられた声に驚いて振り向くその顔に、桓魋ははっとした。祥瓊の頬が、濡れていた。
「祥瓊──どうした?」
「なんでもないわ、雨に濡れただけよ」
 そう言って顔を背ける祥瓊に、桓魋はやんわりと笑みを向ける。嘘が下手だな、と思いながら、長袍の袖を差しかけた。
「──中へ入ろう」
 しかし、祥瓊はかぶりを振った。そして、無理に浮かべた笑みを見せる。
「私は大丈夫。急いでいるのでしょう。行ってちょうだい」
 気丈な言葉はいつもの祥瓊と変わらない。しかし、桓魋は語尾の震えを聞き逃しはしなかった。そして、泣き顔を見せたくないと強がる祥瓊を、愛おしいと思った。
 桓魋は祥瓊に袖を差しかけたまま歩き出す。祥瓊は驚き、抗いかけた。しかし、桓魋はそんな祥瓊に頓着せずに路亭の中に入る。そして、祥瓊を見下ろし、低く囁いた。

「──俺は、祥瓊をそんなふうに独りで泣かせたりしたくない」

 祥瓊は紫紺の瞳を大きく見開く。そのまま、時が止まった。

 やがて、じっと覗きこむ桓魋の前で、誇り高き女史はゆっくりと涙を流す。桓魋は微笑を浮かべ、そっと祥瓊を抱き寄せた。祥瓊は、黙してその胸に身を預けた。

 雨が、優しい音を立てていた。

2008.09.02.

後書き

2008/09/02(Tue) 13:49 No.6
 昔、桓祥を書きかけていたよな〜と思い、あちこち覗いてみました。 あった、ありましたよ、「断片2」という古いファイルの中に。
 日付は、なんと、2006年6月12日。一度、オマケ拍手にも出したことがあったような……。 このたびやっと陽の目を見ることができました。
 Kさま、リクエストありがとうございました!

2008.09.02. 速世未生 記

しっとり 由旬さま

2008/09/02(Tue) 22:31 No.8
 未生様の桓祥(未満)は珍しい……

 祥瓊の涙のわけを知りたい! 失恋?!(誰に?!)
 気丈な女史の一面を見て、桓魋はぐぐっときたに違いありません。 祥瓊も優しい桓魋に信頼感を持ったでしょう。 二人のこれからがまさに始まったようなワンシーンですね。

ほわぁ〜…… K(と書く必要があるのか?/笑) さま

2008/09/03(Wed) 00:29 No.9
 気丈な気質をそのままに静かに泣く祥瓊と、男らしい優しさを見せる桓魋。
 よいですね〜、このふんわりしっとり感。
 これからゆっくりと歩み寄っていく二人の始まりという感じがしました。
 桓魋ってホント、一番大人の男性だよな〜(ほうぅ〜)

 素敵な話をありがとうございます。

ご感想をありがとうございます 未生(管理人)

2008/09/03(Wed) 06:26 No.10
由旬さん>
 はい、私が桓祥(未満)を書くのは珍しいです。というか、これ1本しかございません(笑)。

>祥瓊の涙のわけを知りたい!

 ありがとうございます!  実はこのお話、短編「憧憬」@夜話(本館)連作「包容」の直後という設定でございます。 もしよろしければそちらをご覧くださいませ!  相変わらず連鎖妄想ばかりでごめんなさいね〜。

Kさま>
 リクエスターの方にお気に召していただけて嬉しく思います♪  どちらのKさまか存じ上げませんが(爆)。

 意地っ張りの祥瓊と大人桓魋、ここまで来るのにこんなに時間がかかってるんだ!  というのが私の本音でございます。書く機会をくださってありがとうございました〜。
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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