「管理人作品」 「5周年」

かの方の仮説@管理人作品第9弾

2010/10/05(Tue) 15:52 No.106
 徒然なるままに妄想を書き連ねていたのですが、上手く纏められませんでした。 なので、取り合えず、かの方に仮説を語っていただきました〜。
 というわけで、捏造必至の譫言第2弾でございます。 苦手な方はご覧にならないでくださいね〜。

かの方の仮説

2010/10/05(Tue) 15:55 No.107
「──妖魔はどこから現れるのだと思う?」

 風来坊の太子は酒の肴のようにお気楽に口にした。いったい何を考えてそんなことを問うたのかは分からないが、尚隆は興を覚えた。そんな酔狂なことを考える者が己の他にもいたのか、と。

 確かに、黄海に通じる四門は安闔日にしか開かないのに、国が荒廃すると妖魔は確実に現れる。例えば、巧では白雉が落ちてすぐの頃にはもう赤海から青海に抜ける巽海門が夥しい妖魔のために閉じてしまった。王と麒麟が行方不明となった戴でも、近寄ることができないくらい妖魔が跋扈していた。そして、安定していると思われていた柳でさえ、戴側の沿岸に妖魔が出没していた。かと思えば、州侯が王を弑逆した芳には、さほど多くの妖魔が現れてはいなかった。それはいったい何を意味するのか──。

 泰麒捜索の折、新たな試みが理に触れぬかどうか確かめるために蓬山にお伺いを立てた。碧霞元君は様々なことを教授してくれた。その中に、「王がなければ九侯の全て、王があっても九侯のうち余州八侯の半数以上が在らねばならぬ」という文言があった。「在る」とは「国にいる」という意味だと元君は告げたという。
 六太から報告を受けて、尚隆は苦笑を隠せなかった。それは六太も同じだっただろう。二人とも、王宮を好き勝手に抜け出して戻らぬことがよくあるからだ。かといって、改める気もなかった。が。
 ある日、尚隆は気づいたのだ。安定している雁ではあるが、妖魔が全く出ないわけではない、ということに。徒然なるままに思いを巡らした。そうして、尚隆はある仮説を立てたのだった。

 何故王は国に在らねばならないのか。それは、王自身が国の鎮護を司る者であり、妖魔の跋扈を抑える呪だからなのかもしれない。そして、王が任じる州侯はそれに準じる者。だからこそ、王と州侯は国を空けてはならないのだ。ということは、妖魔は十二国の地のどこかで生まれ育つのだろう。
 王が乱心すれば、諫言する州侯を殺害することはよくある話だ。現に、尚隆が玉座に就いた時には州侯の半分は空席であった。逆に、芳では罪に対して潔癖に罰を与えた峯王を宰輔を覗く余州七州侯が討ったという。どちらの呪が強いかは自ずと明らかだろう。この仮説は整合する、と尚隆は思った。

 では、妖魔はどこで生まれるのか。獰猛で人を襲う妖魔ではあれど、幼生であれば簡単に狩ることができるだろう。であれば、人が容易に近づかないところで生まれるに違いない。ならば、考えられるのは地下だ。野木の根にでも卵果が生れば誰も気づかないだろう。野木を掘り返す罰当たりな者などいはしないだろうから。
 妖魔には雄しかいないという話も聞いたことがある。もしかすると、妖魔の卵果は国の重しが取れるや否や眠りから覚めて孵化するのかもしれない。

 そんな仮説を少しだけ語ると、最長命国の太子である利広は目を輝かせた。

「誰にも見つからないところって、例えば?」

 更に問いを重ねる利広に、尚隆は気を良くして語りを続ける。が、荒唐無稽な仮設を耳にし、利広はさすがに呆れたようだった。

「風漢は相変わらず面白いことを言う」
 お前には負けるがな、と返すと、利広はお互いさまだね、と言って肩を竦めた。きっと、この男とは再度こんな話をする機会があるだろう。そう思い、尚隆は唇を緩めて酒を飲み干した。

2010.10.05.

後書き

2010/10/05(Tue) 16:17 No.108
 私が十二を読む時、いつも意識することがあります。それは対比です。 例えば、麒麟は「人と獣」の二形を持つこと。 「光」の麒麟が「闇」の妖魔を折伏すること。 麒麟の使令は「女怪(雌)」と「妖魔(雄)」であることなど。 そして、王とは光と闇を併せ持つ者。そんな風に思うのです。

 「酒席の譫言」の後書きにて少しだけ書きましたが、 麒麟が生る捨身木の根に女怪が生ることから、野木の根に妖魔が生るのでは、と思いました。
 私は女怪は妖魔に準じるものと捉えておりまして、「光」である麒麟が生る捨身木の根に 「闇」である女怪が生るのであれば、野木の根に妖魔が生ってもおかしくはない、 と思ったのでした。

 「図南」には小さな蟲が大物の先触れのように現れる、との記述もありました。 なので、案外、野木の根には蟲が生り、 里木の根の深いところには大物妖魔が生るのかもしれないですね〜。 もしかして、路木の遥かな地下には饕餮の如き超大物妖魔が眠っているのかもしれない……と griffonさんのご質問を目にして妄想を広げてしまいました。

 わわわ、それこそ荒唐無稽ですね! 譫言ということでお許しくださいませ〜。

2010.10.05. 速世未生 記

待ってました! 黎絃さま

2010/10/05(Tue) 17:53 No.109
 「王が国にいることが即ち呪」だから現在の芳国みたいなケースはじりじりと持ちこたえている、 と考えると凄くきれいに筋が通るので思わず喜々としてしまいました。
 ああ、常世でパソコンと統計ソフトが使えたら楽しいだろうに!……←って こうなるとそろそろ危ないレベルですね(^_^;)。 とにかく仮説の根拠として捏造しなければならない「事実関係情報」も最小限で済みますし、 なにより常世の雰囲気にしっくりくると思います!
 さて未生さまのこの作品を読むまでの間、griffonさまの「野生動物を保護するための妖魔」 というステキ仮説を聞いてから、更に妄想をしておりました。 王がいかれ始めたら気候も悪くなる、食料生産量も減る、 あらかじめ人口を減らすために妖魔がある……などなど。 でもそのうち、上手く噛みあわない点があちこち出来てしまい、めげていたところです。 たとえば黄海の妖魔はたまーに訪れる猟尸師や昇山者だけで食べていけるのか、など……。 やはり「嘘をつくには言葉少なめの方がそれらしく聞こえる」と思い知りました。

妄想から妄想へ ネムさま

2010/10/05(Tue) 22:33 No.110
 妖魔生誕の謎―どんどん広がってきましたね。う〜面白い!  手元に資料がないのでうろ覚えなんですが、十二国神話では蛇の絡まった木に実が生っている、 神から王へ与えられたものを表している図がありましたよね。 この木が人の世であれば、それを支えてる地や樹冠の上の天は神や人外の世界と考えると、 妖魔が路木の根に生るというのも頷けるかも。
 griffonさまの「野生動物を保護」説からふと思ったのですが、 十二国というのは、世界が花弁の形に似ていたり、 陽子が「神の箱庭」と感じるような人間が基本にある世界― 人間がいなくても地球が成り立つ私達の世界とはちょっと違う気がします。 「帰山」で明嬉母さんが世界の異変を「妖魔側の事情かも」と言っていましたが、 十二国の世界で根本的な変動が始まっているのでは…などと妄想がもやもや沸いてきます。 だんだん収拾がつかなくなりそうなのでこの辺で(逃;)

妄想悶々 griffonさま

2010/10/06(Wed) 01:59 No.111
 僕にとっての十二国の世界観って・・・
 たとえば、常世は地球のような世界で一種のパラレルワールドなのか?  僕は、どうもそうではないような気がしています。
 過去の現実世界の人達が信じていた、地動説とか、 亀の背中に世界が載っていると言う世界が、現実としてあると言う世界観、 なように僕は捉えています。

 未生様が言われているように、陰陽、+と−、表と裏、光と闇、 そう言う対となるものが常にグルグルと絡まりあっている。 十二国神話の、木に絡まった二匹(でしたっけ(^_^;))の蛇のように。
 そしてやっかいな気がするのは、それぞれがそれぞれに相対的であると言う感じがすること。 たとえば、王と麒麟を対と考えると、王は間違いなく陽で麒麟は陰。 麒麟と女怪が対であれば、麒麟は陽? 女怪は陰?  でも王との関係を考慮すれば、麒麟は陰ですから、では女怪は陽?。 女怪はどうも妖魔に近いと思われるとなると、では妖魔はヨウマだけに陽? (^_^;)  え〜妖魔ってくらいだから、陰? などと脳がグルグルしてます。

 構造的なとこも・・・
 人が住む国の周りには虚海があり、空の上にはやはり海があり、 海に突き出たような島(凌雲山の先端)に王(神)か住む。 虚海に突き出た島のような十二の国。
 もしかして、虚海もやはり雲海なのではないか。 その雲海の下には、なに者かが生きて生活をする国があるような気がする。 逆に、雲海の上の王の世界にも、どこかに巨大な凌雲山があって、 王の世界の空にもやはり雲海があって、その上には天帝(もしかして、達?)が住んでいるとか。
 虚海の下に住まう物・・・虚の世界・・・負ではなく虚・・・ などと色々妄想していたのですが、妖魔って虚海の下に住まう物の王とその側近ってのは 無しですか?
 十二国に住む人の王は雲海の上に住むわけですから、虚海の上には、 虚海の下に住むものの王がいても良いわけで・・・

 あ゛〜脳がオーバーヒートしてきた・・・

ご感想御礼 未生(管理人)

2010/10/06(Wed) 18:01 No.112
黎絃さん>
 早速のご感想をありがとうございました。  「王が玉座にいるだけで天災が収まる」のは何故か、と考えていたところに 「王が国にいなければならない」という文言を見つけ、王自身が呪なのかもしれない、 と思った次第でございます。ご賛同いただけて嬉しく思います。

ネムさん>
 「黄昏〜」を読んだ時に思っのは「天にも戴を見捨てる気などないが、 個々人それぞれを救う気がないだけ」だということでございます。 「神の箱庭」。そう、十二国とは、ある意味(不謹慎ながら)「人間牧場」なのかも、とか。
 私は十二国の世界はこれからどんどん崩壊していくように思われてなりません。 そんなわけで、私の書くものは全て「末世(十二国世界の崩壊)」思想が下敷きと なっております。わわわ、ほんと不謹慎でごめんなさい〜。

griffonさん>
 私も十二国の世界はパラレルワールドではないと思っております。 上でも書きましたが、「人間牧場」というか「実験場」のようなもので、 天さえも制御できない蝕はバグのようなものかも、とか思ってしまいます。
 対比についてですが、「陽」である麒麟は「陰」である妖魔を従えることによって、 光と闇を併せ持つ王の半身となるのでは。王も麒麟も陰陽併せ持つと私は考えます。

 十二国は人のための世界。雲海は人と神を分けるために存在し、 虚海は人の世界を確立するためにあると思います。 虚海の向こうには何もない=人の住む世界はここだけ、というように。 黄海の妖魔は昇山者を試すためにある。
 そんなふうに、私が考える十二国は案外単純でございます。(10/7追記)
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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