「管理人作品」 「尚陽祭」

かの方の画策@管理人作品第6弾

2011/09/12(Mon) 16:10 No.54
 皆さま、いつも祭に拍手をありがとうございます〜。 けれど、せっかくの祭なので、ご参加くださると嬉しく思います。一緒に踊りましょ♪

 さてさて、本日、ゲームに現を抜かしつつワードを開けておりました。 リク物と連鎖妄想物を書いておりましたが、やっぱり纏まりません。 なので、お茶美越しで申し訳ないのですが、視点を間違えて書いた小品を投下いたします。
 では、第5弾「痛み分け」のオマケをどうぞ。

かの方の画策

2011/09/12(Mon) 16:11 No.55
 麗しの紅の女王を己の伴侶と公言した。後宮に伴侶の居室を設け、誰にも憚ることなく逢瀬を楽しめる。しかし、延王尚隆は更なる欲求を満足させようと画策するのだった。

 昼の私室に伴侶を呼び寄せる。程なく伴侶が現れた。尚隆は破顔して伴侶を手招く。伴侶は小首を傾げつつ尚隆が座す榻の傍に歩み寄った。
「まあ座れ」
 伴侶は素直に尚隆の隣に腰掛けた。にやりと笑って見下ろすと、伴侶は少し身構える。
「──何考えてるの?」
「そう案じるな」
 毛を逆立てた猫のようなその様子に、尚隆は笑いを誘われた。軽く答えて伴侶の問いを遮る。
「──動くなよ」
 そう言い様に、尚隆は伴侶の膝に頭を乗せて寝そべった。伴侶は即座に硬直し、落ちそうなくらいに目を見開く。予想どおりの反応は、予想以上に可愛らしかった。
「面白い顔だ」
 可愛い、と言外に籠めた想いは伝わるだろうか。褒め言葉を素直に受け取らない伴侶は、頬を淡く染めて俯いた。尚隆はそのまま目を閉じる。そして、この膝を一人占めできる喜びに包まれて意識を手放した。

 どのくらい眠っただろう。伴侶の膝枕は心地よく、寝過ぎてしまったかもしれない。尚隆が目を開けると、伴侶が心配そうに見下ろしていた。近くでは何故か六太が笑い転げている。
「──なんだ?」
 誰とはなしに問うと、六太は笑い止め、面白そうに尚隆を見つめる。尚隆はゆっくりと起き上がった。頭が妙に重い。見ると、尚隆の髪は沢山の三つ編みにされ、色とりどりの組紐が結ばれていた。
「──お?」
 この几帳面な仕事振りは六太ではないだろう。尚隆はおもむろに伴侶を見やった。伴侶はにっこりと笑みを返す。しかし、その笑みは幾分ぎこちないものだった。尚隆は内心にやりとほくそ笑む。無論そんな思いはおくびにも出さずに伴侶を見つめ続けた。
 伴侶の身体が緊張で硬くなる。それにつられて六太も固唾を呑んでいた。伴侶の笑みがそれと分かるほど引きつってきたとき、尚隆は爽やかに見えるだろう笑みを浮かべて口を開いた。
「──陽子」
「な、なに?」
「楽しかったか?」
 動揺を隠そうと必死の伴侶に向けて、尚隆はにっこりと笑んだまま訊ねる。伴侶はぎこちない笑顔のまま小さく答えた。
「うん」
「それはよかった」
 尚隆は大きく頷いて、伴侶の頭に手を乗せた。伴侶は安堵の溜息をついて身体の力を抜く。尚隆の思う壺に嵌る伴侶はほんとうに可愛らしい。そんなとき、六太が察して叫び声を上げた。
「陽子!」
 しかし、時既に遅い。尚隆は伴侶を抱きすくめ、首筋を強く吸い上げた。細い悲鳴が堂室を突き抜けた。
「尚隆……!」
「俺も楽しいぞ」
 六太が深い溜息をつきながら咎める。尚隆は笑い含みに返した。悪戯の意趣返しを受けた伴侶は、涙目で首を押さえていた。
「さて、行くぞ」
「ど、どこへ?」
「夕餉の時刻だ」
 伴侶は涙目のまま首を横に振った。尚隆は隠しようもない場所に刻んだ鮮やかな所有印を見やり、にやりと笑った。
「別に隠す必要もなかろう。誰も何も訊かぬよ」
 国主夫妻の痴話喧嘩に口を挟める剛の者など、玄英宮にはいない。沢山の三つ編みを揺らして笑う尚隆を見つめ、六太は苦笑を浮かべ、伴侶は深い深い溜息をついた。

 夕食後、私室に戻った尚隆は、まだ涙目の伴侶を膝に乗せ、組紐を解いていく。全て取り終えると、うねった髪がいつもの倍以上に広がった。伴侶は漸く淡い笑みを見せた。
「似合うか?」
「たまにはいいかも」
 尚隆は機嫌を直した伴侶を優しく抱きよせ、ほころぶ朱唇に甘く口づけた。

2011.09.12.

後書き

2011/09/12(Mon) 16:13 No.56
 「痛み分け」の尚隆視点でございます。 こちらを書き上げて、リクエストは陽子視点と気づき、書き直しました。
 二人の胸の内を比較していただけると嬉しく思います。お粗末でございました〜。

2011.09.12. 速世未生 記
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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