秘めた刻印@管理人作品第8弾
2011/09/15(Thu) 06:26 No.66
祭に拍手をありがとうございます〜。
さてさて、9月も半ばになりました。寄り道し過ぎですから!
そろそろ気合を入れてリク物に取り掛かります。
というわけで、リク物第5弾を仕上げました。
- 登場人物 尚隆・六太・陽子・班渠
- 作品傾向 ほのぼの
- 文字数 1222文字
秘めた刻印
2011/09/15(Thu) 06:27 No.67
愛しい女は蓬莱生まれの胎果の王。
求婚するなら蓬莱のしきたりに則れ、と同じく胎果の宰輔が延王尚隆に苦言を呈した。気が利かない尚隆のために、というよりは、陽子の秘められた乙女心のために、六太は蓬莱から取り寄せたという大量の資料を置いて執務室から出ていった。尚隆は苦笑しながらもその中の一冊を手に取った。
時折左手を眺めて溜息をついていた伴侶。蓬莱の本はそのわけを教えてくれた。左手の薬指に嵌められた銀色の指輪は既婚の印。尚隆はふと唇を緩める。生真面目でぶっきらぼうな伴侶が胸に秘める乙女らしい憧れを、叶えてやりたい気持ちになったのだ。
六太が集めた資料には意匠を凝らした指輪が数多く載せられていた。その中でも伴侶に似合いそうなものを見つけ、尚隆は微笑した。
資料は更に蓬莱の風習を説いていた。指輪の内側に、名前の頭文字を刻印するのが慣例だ、と。例に挙げられていたものは、伴侶がよく書く横文字であった。
そういえば、伴侶とともに横文字で名前を書いてみたことがあった。あれを使えば指輪に刻印することは可能だろう。細工も武骨な雁では無理だろうが、匠の国の範ならば、この資料を基にして見事なものを創り上げるに違いない。尚隆は事細かな指示を書いた書面を作り上げ、下官を呼び寄せた。
やがて、範から螺鈿の小箱が届いた。箱を開けると、銀色の指輪が煌く。手に取って覗きこむと、依頼したとおりの飾り文字が刻まれていた。範から問い合わせが来ることはなかった。しかし、美しいが奇妙な模様に、職人はさぞや首を傾げたことだろう。そう思うと可笑しさが込み上げる。
指輪を小箱に戻すと、胸に伴侶が浮かんだ。これを見たら、伴侶はどんな貌をするだろう。驚くだろうか。喜んでくれるだろうか。こんな想像で楽しめる日が来るとは、微塵も思っていなかった。年若い伴侶は、いつも尚隆に新しい刺激を与える貴重な存在なのだった。
時満ちて、尚隆は隣国を公式に訪問した。正式な求婚は、怒れる女王を驚かせ、喜ばせ、涙ぐませた。金波宮にて慶賀の宴を済ませ、尚隆は伴侶を連れて玄英宮に戻った。
蜜月の日々はあっという間に過ぎゆく。お披露目も終わり、伴侶を送り出す時が来た。尚隆は銀色の指輪が光る華奢な左手を押し頂き、その甲に恭しく口づける。伴侶は耳まで赤くなりながらも別れの挨拶を素直に受け入れた。またしばらく会えない日々が続く。しかし。
「何が可笑しいの?」
頬を朱に染めたまま、伴侶が尚隆を睨めつける。尚隆は込み上げる笑いを噛み殺した。衆目の前での愛情表現に耐えるお前が可愛い、とこの場で言うことはできない。
婚姻の贈り物である指輪を受け取る時も、伴侶は様々な貌を見せてくれた。指輪の内側に刻んだ文字を見つけたら、いったいどんな貌をするだろう。
「次に会える日を楽しみにしているぞ」
それだけを告げて、赤い頬に口づけた。伴侶は何も言わずに班渠に跨る。低く笑う使令を叱責することもなく飛び立つ伴侶を見送って、尚隆は笑みを浮かべた。
2011.09.15.
後書き
2011/09/15(Thu) 06:28 No.68
この辺のいきさつは連作「慶賀」より「慶賀」「贈物」「至福」等をご覧くださいませ。
このお話を書くためにいろいろ読み直し、痒くなってしまいました。
頭壊れてたんだなと思います……(恥)。
Iさま、リクエストありがとうございました!
ご満足いただけたかどうか甚だ不安ではございますが、
この辺りが限界とお察しくださいませ……。
- 御題其の四十一「贈り物のおまけ」のあとがきに書かれた
『陽子がいつ気付くか、とほくそえむ尚隆』を読みたいのでお願いします
2011.09.15. 速世未生 記
わあ! 未生(管理人)
2011/09/19(Mon) 07:11 No.79
ネムさん、いらっしゃいませ〜。
素敵なコメントをありがとうございます。
シャンパンのピラミッドを自分で積み上げる尚隆と
止めようとして涙目の陽子主上を思い浮かべてしまいました(笑)。
10年後の金剛石指輪、よいですね♪ そういうのはまた六太が焚きつけそう〜。
10年毎とかに記念日を祝ってたら、
寿命のない王さまたちは大変なことになりそうですね(笑)。