清秋遊山@管理人作品第13弾
2011/10/03(Mon) 16:15 No.120
皆さま、こんにちは。いつも拍手をありがとうございます。
北の国の本日の最高気温は10.7℃。最低気温じゃないですよ!
近隣の山は初冠雪、私の地元では初雪が降りました。
でも、我が街はまだ秋でございます。初雪が降るまでは秋(しつこい)!
最後のリクエストを仕上げました! わーいわーい!
頭が壊れてきていたので、ちゃんとほのぼの話を書けるかどうか不安だったのですが、
なんとかなりましたね〜。
というわけで、ほのぼのに欠かせない桂桂登場のお話をどうぞ。
- 登場人物 尚隆・六太・陽子・桂桂
- 作品傾向 ほのぼの・コメディ?
- 文字数 2183文字
清秋遊山
2011/10/03(Mon) 16:27 No.123
「おう、陽子。出かけるぞ!」
一足先に慶東国国主の執務室に乱入した延麒六太の声が回廊にまで響き渡る。延王尚隆は笑いを噛み殺しながら景王陽子の返しに耳を澄ませた。
「延麒、悪いが今日は先約がある」
「先約? そういうことならおれが話をつけてやる。誰だ?」
「隣国の宰輔に逆らえる者がどこにいるんです。私がだめだと言ってるんですから、私の話を聞いてください」
「だから、誰だよって訊いてるだろ」
陽子と六太の噛み合わない遣り取りは、存外に愉快だ。尚隆は入り口で足を止め、二人の舌戦を聞いた。陽子はいつになく強固に抵抗している。その深い溜息に、六太は大いに拗ねたようだった。何が何でも連れ出してやる、という気が漲る六太に、陽子がとうとう先約した者の名を告げる。
「桂桂ですよ。久しぶりに二人で過ごすんです」
陽子は桂桂を弟のように可愛がっている。だから邪魔をするな、という言外の声が聞こえ、尚隆は笑声を隠すことなく執務室に足を踏み入れた。
「なんだ、桂桂か。ならば、一緒に連れて行けばよい」
尚隆の声に振り向いた陽子は、顔を蹙めて嘆息した。そうして諦めたように両の手を挙げる。
「まったく、あなたたちには敵いませんね」
「そうそう、素直が肝心だぜ」
援護射撃に気を良くした六太がお気楽に笑う。陽子は呆れながらも苦笑した。それでも、釘を刺すことは忘れない。
「本人に確認を取ってからですよ」
女王の譲歩に、六太は満面の笑みで頷いた。
「主上、お呼びですか」
間もなく桂桂が執務室に現れた。隣国の主従の到着は耳にしているらしく、畏まった口上だ。陽子は尚隆と六太を睨みつつ、桂桂には優しく話しかけた。
「桂桂、一緒に果物狩りに出かけないかと誘われているんだが、どうかな?」
「あ、あの、僕は遠慮します……」
隣国の宰輔に威圧された気の毒な桂桂は、小さな肩を竦めて小声で答える。予想に違わぬその応えを聞いて、陽子はにっこりと笑んで六太に告げた。
「というわけなので、私も遠慮しますよ、延麒」
「えー!」
「先約があると申し上げたでしょう」
では、と言って去ろうとする陽子を尻目に、六太は桂桂を懐柔しようとする。馴れ馴れしく肩を抱き、猫撫で声を出す六太は、ある意味かなり不気味だ。
「なあ、桂桂、果物狩り、楽しいぜ。行こうよ。なんなら桂桂だけでもいいぞー。な?」
「は、はい、僕でよろしければ……」
「延麒!」
恫喝と言ってもよい隣国の宰輔の誘いを、一介の奄が逆らえるはずもない。桂桂は消え入るような声でそう答えた。無論、陽子が即座に割って入る。が、六太が怯むことはなかった。
「確認は取っただろ」
「それは脅迫と言いませんか?」
「言わない。よな?」
「は、はい……」
不穏な目付きで隣国の宰輔に睨まれれば桂桂は是と言うしかない。陽子は顔を蹙めて尚隆に視線を移したが、尚隆は唇の端を上げてみせただけ。陽子は盛大に溜息をつきながら、出かけることを了承したのだった。
六太はそのまま桂桂を引っ張って禁門へ向かった。当たり前のように己の騎獣に桂桂を坐らせて、自分はその後ろに腰を落ち着ける。その傍若無人さに、陽子も当の桂桂も絶句したままだった。
「しゅっぱーつ!」
能天気な六太の雄叫びとともに空へと舞い上がる。陽子はまだ絶句していた。
山へ向けて空を駆ける。郊外に近づくにつれて鮮やかな赤や黄色が増えていく。錦の衣を纏った木々は、秋の澄んだ空によく映えた。
「──わあ!」
やがて、感嘆の声が響く。見下ろす木々がそれぞれに赤い実をたわわに実らせていた。空を駆ける者にとってはもはや当たり前の風景でも、見慣れぬ者の目には新鮮に映るのだろう。素直に目を見張る桂桂の姿に、尚隆は唇を緩める。見ると、陽子もまた目を細めて桂桂を見つめていた。
「な、綺麗だろ」
「はい!」
六太の得意げな声が聞こえた。桂桂は弾んだ声でそれに応える。気を良くしたのか、六太は騎獣を空中で止めて、紅い実を間近で見せた。
「う、わぁ……ほんとにりんごが生ってる……」
目を丸くして桂桂が囁いた。動乱の時代に産まれた子供だ。父母を喪い、ただ一人残った姉をも喪って陽子に引き取られた。金波宮に来てからも奄として働いていた桂桂が目を見張っても不思議はないだろう。
「一番紅いのをもぐといい。美味いぞ」
にんまりと笑った六太は、甲斐甲斐しく桂桂の世話を焼く。桂桂は恐る恐る林檎に手を伸ばした。陽に当たり、よく熟れた実は、少し捻るだけで枝から外れる。六太の指示どおり林檎をそのまま齧った桂桂は歓声を上げた。
「あ、甘い!」
「そうだろ、そうだろ。果物は枝からもぐのが一番美味いんだ」
六太はそれが己の手柄のように胸を張る。尚隆と陽子の逢瀬を邪魔する気満々で金波宮に乗りこんだはずの六太のその姿は、尚隆の微笑を誘った。
「──なんだか兄弟みたいだね」
陽子が柔らかな声で呟く。確かに、見た目の年頃は近い二人がはしゃぐ様は仲のよい兄弟のように見えた。そして、そんな二人を温かい目で見守る陽子
は──。
「そう言うお前は、まるで母親のようだぞ」
「ええ?」
「かあちゃん、りんご美味いよ!」
尚隆の軽口に、陽子は目を見開いた。六太がすかさず茶々を入れる。尚隆はにやりと笑った。固まる陽子とはにかむ桂桂を見やる。
「では、とうちゃんも参戦だ」
「そいつはいいや!」
森の中に笑い声が響く。その日、親子宣言をした四人は、心ゆくまで林檎狩りを楽しんだのだった。
2011.10.03.
思わぬところで 未生(管理人)
2011/10/04(Tue) 06:29 No.129
ウケた! お楽しみいただけて嬉しく思います〜。
senjuさん>
奇声も妄言も聞いてみたかったです〜。今からでも遅くないですよ!
倒れるほど笑ってくださるとは。きっとかの方もほくそ笑んでおりますよ。
はい、あと2日でございます。存分に踊ってくださいませ。
ご投稿をお待ち申し上げております!
まつりさん>
白状いたしますと、この作品も視点を間違っておりました。
陽子で書き始め、誤りに気づき途中放置……(苦笑)。
けれど、昨日の午後に場面が降りてきてからは一気書きでございました。
酸欠になるほど笑っていただけて嬉しいです! 私も楽しんで書きましたので。
リクエストありがとうございました〜。
饒筆さん>
確かに確かに。五百歳の悪たれ兄ちゃんは悪いことばかり教えそうですよね〜(笑)。
きっとかあちゃんはいつも目を光らせていると思いますよ!
ありがとうございます〜 未生(管理人)
2011/10/06(Thu) 08:37 No.149
いつも置いていかれる六太は今回尚隆と陽子の邪魔をする気満々だったようですが、
更に邪魔と思った桂桂に喜ばれてご満悦でございますね〜。
傍若無人六太をもほのぼのさせる桂桂に私も脱帽でございました。
陽子主上はびっくりし過ぎて怒る暇もなかったんだと思います。
きっと目をまん丸にして固まったままでございます(笑)。同情票をありがとうございました〜。
果物狩り、私は桜桃と葡萄でも元を取りますよ!
朝食を控えめにしてがっつきます(笑)。でも、林檎はキビシイですね〜。
半分分けとかしながら食べても5〜6種類しかイケません。
仕方なくお土産にして持って帰ります
(林檎はお土産一人につき2個までOKなのでございます)。
あ、果物狩りの話は止まらなくなります〜。お付き合いありがとうございました!