「管理人作品」 「尚陽祭」

運命の邂逅@管理人作品第14弾

2011/10/05(Wed) 16:54 No.131
 皆さま、こんにちは。 本日の北の国の最低気温は9.5℃、最高気温は20℃でございました。 ポカポカ陽気が心地よい……と思った途端の夕立に驚きました。 秋のお天気は不安定で困りますね〜。

 さて、祭最終日でございます。管理人は懸案の連鎖妄想を仕上げました。 ネムさん作#11「容昌」の連鎖妄想でございます。それではどうぞ!

※ 原作引用につき、苦手な方はご注意くださいませ。

運命の邂逅

2011/10/05(Wed) 16:57 No.132
「──小娘一人に随分騒ぎ立てる」

 巧州国国主塙王からの書簡を読み終わり、雁州国国主延王尚隆は薄く笑む。巧から雁に逃げこんだという海客の引き渡しを求める書状であった。年の頃は十六、七、赤髪の娘。抜き身の剣を持ち、極めて凶悪である、との手配書きが添えてあった。
「まあ、無理もないか」
 先日、慶東国宰輔景麒が雁を訪れた。慶の新王が蓬莱にいるかもしれない。景麒はそう言って助言を求めたのだ。蓬莱にて延王尚隆を見い出し、更に現在の蓬莱にも詳しい雁州国宰輔延麒六太の意見を聞き入れて旅立った景麒は、そのまま消息を絶った。
 そういった事情を鑑みれば、塙王の前代未聞とも言える申し入れは、その海客が慶の新王であることの証明であろう。慶では麒麟を持たぬ輩が新王を名乗って世を騒がせている。しかも、前王の妹だというその女が新王であるはずはない。その偽王が、遂には獣形の麒麟を傍に置いた。慶の偽王舒栄には、何者かが援助している。それが何を意味するのか、尚隆は既に気づいていた。
 そしてまた、慶を調査しに出かけて不在の宰輔延麒宛に大仰な書簡が届いた。

 景王雁に在り。

 それは、尚隆が立てた仮説を裏付けるに足る情報だ。尚隆は直ちに景王が宿泊しているという容昌の街へと赴いた。

 夕刻の街は雑多な人々で溢れていた。景王が宿泊している舎館はかなりの安宿だった。知って尚隆は唇を緩める。胎果の若い娘だというが、その為人が分かるような気がしたのだ。そんなとき、尋常とは思えぬ悲鳴が響き渡った。
「──妖魔だ」
「妖魔が出たぞ」
 切れ切れに叫び声が聞こえ、人々は慌てふためき、逃げ惑った。尚隆は舌打ちし、足を速める。豊かな雁に妖魔が現れることは少ない。が、己の国が妖魔に蹂躙されることなど許すつもりはなかった。人の波に逆らい、角を曲がったそのとき──。

 夕闇漂う狭い串風路に、舞い踊る紅蓮の炎を見た。その、鮮烈な紅の光。暗闇を照らす輝きでありながら、その色は昏い深淵を内包する。
 煌く双眸はしっかと獲物を捉え、剣を繰るその細い腕は確かに妖魔を屠っていく。我知らずその光景に見蕩れ、尚隆は呟いた。

 ──天啓が降りた。これが、俺の運命だ。

 そしてそれが、延王尚隆と景王陽子の出会いであった。

「まだいるのか……っ」
 息切らす娘の声に、自失していた尚隆は、はっと我に返る。紅の光を纏う娘に、毒を持つ妖鳥が迫っていた。尚隆は剣を抜き放ち、娘の助力に走った。
 立ち竦む娘を襲う鳥を叩き落とす。その刹那、娘は迫りくるもう一羽を斬り捨てた。そして、突進してきた青牛をひらりと躱す。尚隆はその牛の後頭部に剣を突き通した。娘は目を見開く。助っ人に驚いて隙を見せる娘に襲いかかる鳥。青牛から引き抜いた剣でそれを薙ぎ払い、尚隆は娘を叱咤する。
「気を散じるな」
 手を止める娘に声をかけると同時に、最後の鳥を造作なく斬り捨てた。娘は力強く頷き、再び確かな腕で妖魔に立ち向かう。緋色の髪を靡かせ、紅蓮の炎を燃え上がらせて戦う娘は流麗だった。尚隆は内心感嘆しつつ、休みなく剣を繰る。それから辺りが静まり返るまで、いくらもかからなかった。

 動かなくなった数多の妖魔を見下ろし、延王尚隆は眉根を寄せた。雁の街中にこれほど妖魔が現れるなど、異常な状態だ。尚隆はこの事態の原因となったであろう娘に目を向けた。
 質素な袍子に身を包む、紅の髪の娘。血に濡れた剣はほころびひとつなく、ただの剣ではないことを主張している。そして、襲いくる数多の妖魔に怯むことなく立ち向かったこの娘こそ、隣国に遣わされた新たな王。その景王を自ら迎えにやってきた延王尚隆は薄い笑みを浮かべた。
「良い腕をしている」
 血糊を払って剣を収めながら、肩で息をする娘に声をかけた。娘は黙して尚隆を見上げる。これほど真っ直ぐに見つめ返されたのは久しぶりだ。臆することのない輝きを擁する翠玉の瞳に、延王尚隆は魅せられたのだった。

2011.10.05.

後書き

2011/10/05(Wed) 17:03 No.133
 尚隆と陽子の出会い。実はきちんと書いたことがございませんでした。 あちこち小間切れに書き散らしたままのものを拾い集めてまいりました。 尚隆の深謀遠慮を妄想するのは楽しかったです。
 ネムさん、ツボを衝いてくださってありがとうございました!

2011.10.05. 速世未生 記

再び黄色の声が ネムさま

2011/10/05(Wed) 21:37 No.139
 二王並び立ち妖魔を降す―あぁ本当に伝説の一場面ですね。 “これが俺の運命だ”で、再び内心で黄色い声をあげました。 一ヶ月前のことは忘れようと思いましたけど、 未生さんがこんな素敵な場面にして下さって、やはり下手でも出して良かったです(感涙)

 一ヶ月間、正統尚陽派でもないのに(読むのは好きです) こんなにお邪魔して良かったものかと反省していますが、 改めて原作を読み返したり、皆さんの作品に触発されたりして、 また視点を増やすことが出来ました。 本当はお祝いしなければならないところ、結局遊ばせて頂きました。 ここでお礼と共に、改めて今後の未生さまのご活躍をお祈り申し上げます。
 ありがとうございました。

やっぱりス・テ・キ! 饒筆さま

2011/10/05(Wed) 23:51 No.141
 やっぱり、全ての物語は出会いから始まるんですね〜!
 ステキすぎる天啓です☆
 慶の女王にはもう三度もガッカリしていますからね、 期待半分・様子見半分で見に行ってみたら、キューピッドの矢が直撃したワケですね!  いやん、もうそのまま愛が爆走してオッケーです(笑)

 節操が無い割にはCPが書けなくてお目汚しの参加となりましたが、 とても楽しませていただきました。 ありがとうございました〜そして改めて六周年おめでとうございます。 また遊びに来ますね!!

こちらこそ 未生(管理人)

2011/10/06(Thu) 06:36 No.146
ネムさん>
 二王並び立ち妖魔を降す── 実際それを目の当たりにした楽俊の視点で書きかけて頓挫いたしました。 「容昌」のかっこよさをどうにも再現できず、己の力の無さに歯噛みしておりました。 書きやすい尚隆で仕上げた次第でございます。
 黄色い声を上げていただき嬉しく思います〜。 原作から直に尚陽に走った痴れ者といたしましては最上の褒め言葉でございます!
 こちらこそ、長丁場のお祭にお付き合いくださってありがとうございます。 年2回も祭を催してしまう浮かれ者でございます。 遊んでいただけて心より嬉しく思います!  機会ございますればまたご参加くださいね〜。

饒筆さん>
 はい、原作を読んだ時、鮮烈な出会いだな〜と思っておりました。 お楽しみいただけて嬉しく思います。 この後は長編「月影」にて暴走いたしております。 ご興味おありでしたらお時間おありの時にでもご覧くださいませ〜。
 いえいえ、祭は一緒に踊ってくださる方がいらっしゃるからこそ開催できるのでございます。 お楽しみいただけて嬉しいです。どうぞまたいらしてくださいね!  ご参加ありがとうございました〜。
背景画像「幻想素材館 Dream Fantasy」さま
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