捏造艶聞小説より一節
薔薇色の本
饒筆さま
2011/09/10(Sat) 12:34 No.32
どうして?
あなたと過ごす時間は、矢のように過ぎて。もう夕暮れ。風が冷たい。
赤い夕陽が胸まで焦がす。
――攫って、なんて言えない。
あなたは帰らなきゃならない。
苦しいほどわかっているけれど。あと少し
――もう少し。
袖を引く指に、力が入る。
「どうした、陽子?」
愛しい笑顔。でも、駄目。私は笑えない。
零れそうなの、涙が。張り裂けそうなの、胸が。
お願い。どうか
――崩れそうな私を、抱き留めて。
揺れる瞳に全てを託す。
視線が絡んで、時が止まって
――あなたはふっと微笑んで。
「そんな顔をするな」
温かい手が頭に乗った。
違う。違うわ。私が欲しいのは、優しさじゃない。
その瞳の奥の熱情が、胸に荒れ狂う激しさが、忘れられない温もりが・・・あなたの愛が欲しいの。
広い胸にそっと寄り添い、額を預ける。
頬を滑らせ、おずおずと腕を回せば
――不意に、力いっぱい抱き締められた。
「・・・莫迦。このままじゃ、帰れないだろうが・・・」
なんて愛い奴だと漏らす吐息が熱い。
ああ、あなたが好きよ。どうしようもなく好き。
ぎゅっとしがみついて。もう離さないで。
・・・今日が終わるまで帰さない。
<了>
ひゃあ! 未生(管理人)
2011/09/10(Sat) 16:02 No.33
饒筆さん、いらっしゃいませ〜。
ラ、ラブラブですね! オチは、オチはドコ?
と焦ってしまいましたが、ラブラブのまま終わりましたね!
まだ心臓がバクバクしております〜。
素敵な「艶聞小説」をありがとうございました! どうぞまたいらしてくださいね。