猪突猛進@管理人作品第2弾
2012/09/03(Mon) 17:09 No.14
次行きましょう。
本日も真夏日となりました北の国からこんにちは。
最高気温、31.6℃。昨年も暑いと騒いだような気がいたしますが、
ここまで真夏日が続いてはいなかったと思います〜。
さて、次は何にしようかと迷っておりました。
でも、ネムさんの素敵な尚隆を拝見して尚隆を書きたくなりました。
多少原作を引用しておりますので苦手な方はご覧にならないでくださいね〜。
- 登場人物 尚隆・帷湍
- 作品傾向 ほのぼの(多少原作引用・閲覧注意!)
- 文字数 1140文字
猪突猛進
2012/09/03(Mon) 17:11 No.15
王の居城は海の上にあるという。それは、玄英宮という壮麗な城であった。玄武という巨大な亀に乗って到着した延王尚隆と延麒六太を、数多の者が恭しく平伏して迎えた。
国土は荒れ果てているというのに、城の中もそこにいる者も随分と立派であった。いずこも変わらないな。尚隆は胸の中でひとりごちた。生国の領主であった父もそうだった。風が不穏な臭いを孕んでも尚、雅な生活を捨てようとしなかった父。同様に、この城の住人達も、海の下の荒廃から目を逸らしているのだろうか。
ゆっくりと首を振る。尚隆はまだこの国を知らない。尚隆を王に押し上げた六太も、蓬山育ちでやはりこの国の現状を知らない。尚隆は唇を緩める。まずは城の中を知ることから始めよう、そう思った。
目に入る者全てが浮かれているように見えた。正直な感想を述べると、誰もが同じことを言った。数十年振りに王が起ったからだ、と。尚隆は不思議に思う。先帝は国を蹂躙し尽くして滅んだというのに、何故次の王たる尚隆に期待を持てるのだろう。尚隆が今度こそ国を滅ぼすかもしれないとは思わないのだろうか。
兎にも角にも、尚隆は諸官に促されるままに即位の式典に挑んだ。威儀を正した官吏たちが次々に慶賀を述べて拝謁した。誰もが同じように頭を下げ、同じように尚隆の品定めをしていた。
皆同じに見える。六官の長だという冢宰も、官名も分からぬ小官も。
その中で、いきなり書簡を投げつけ、尚隆を詰った者がいた。投げ捨てられたものは、八年分の戸籍。登極が遅れたために死んだ民を己で確認しろ。そう叫んだ男を、尚隆はじっと見つめた。
浮かれていた官吏たちは静まり返り、固唾を呑んで見守っていた。男は必死な形相で尚隆を見つめ続けている。目を逸らさぬ男の眼には、死の覚悟が見て取れた。
処刑を辞さぬ奏上か、と思うと唇に笑みが浮かんだ。どうやらこの城にも気骨のある者がいるのだ。尚隆は立ち上がって戸籍を拾い上げる。そして、まだ尚隆を凝視している男に笑い含みに告げた。
「目を通しておく」
男は呆然と尚隆を見つめる。今まで動けずにいた護衛の者たちが男を引き摺っていった。私心なく民のために怒りの声を上げたあの男は使えるかもしれない。尚隆は薄く笑んだ。
その後、尚隆は男の身元を調べさせた。男の字は帷湍。人民を管理し、納税のための台帳を整備する田猟という官であったが、既に更迭されていた。それならば、と地を整える遂人に抜擢して側に召した。そして、その猛進ぶりに感心し、後に猪突という字を下賜したのだった。
「この痴れ者が! 莫迦が! 昏君が!」
あれから二十年経っても、帷湍は相変わらず主を罵倒し続けている。実は猪突の猛進に和んでいるのだが、それは言わぬが花だろう。延王尚隆はこっそりと胸で呟いて、にっこりと笑むのだった。
2012.09.03.
後書き
2012/09/03(Mon) 17:19 No.16
以前出した拍手其の二百九十六「新王の登極」及び三百一「猪突猛進」を、尚隆から見た帷湍、というコンセプトで纏めてみました。やはり、帷湍は猪突だからいいのですよ! 管理人の偏見かもしれませんが(苦笑)。
皆さまのご投稿をまだまだお待ち申し上げております〜。
2012.09.03. 速世未生 記
確かに「爺や」(笑) 未生(管理人)
2012/09/04(Tue) 06:07 No.20
饒筆さん、いらっしゃいませ〜。
「帷湍=爺や」説、なるほど! と手を打ちました。
確かに、ちょっと(かなり)口うるさいのが玉にキズですが(笑)。
上に立つ者であればあるほど耳に痛い言葉を投げかける者に
目をかけるような気がいたします。
それができなければ、すぐに陥落してしまうでしょうし。
そんなわけで、部下の怒声に和む尚隆を書いてみました。
お楽しみいただけて嬉しく思います!
――(爆) 未生(管理人)
2012/09/06(Thu) 05:58 No.26
ネムさん、名言でございます! 若さまは「甘えん坊」!
笑いのツボに入ってしまいました〜!
若さまはあちらでもバカさましてましたし、
それは腹に一物ある連中をあしらうためには必要なことなのでしょうね。
そのなかで、表裏なく諫言する猪突の罵声に癒される、と(笑)。
ご感想をありがとうございました〜。