「管理人作品」 「祝7周年滄海祭」

新王の謀略@管理人作品第7弾

2012/09/29(Sat) 07:00 No.101
 暖かな朝を迎えました。 最低気温17.1℃はこの時期にしては驚異的な暖かさでございます。 予想最高気温は25℃。この期に及んでまだ夏日ですか!
 さてさて、管理人は昨日の夕方新装版「風の海〜」をゲットいたしました。 ああ李斎……!  そして、HW版の下巻にいたはずの尚隆と六太が消えてなくなり、 ショボンでございました〜。
 気を取り直して。いつも拍手をありがとうございます〜。 本日より1泊2日の温泉旅行で留守にいたします。 その前に一作投下しにまいりました。よろしければお楽しみくださいませ。
 週末でございます。管理人は不在ですが、 皆さまはどうぞ掲示板でお楽しみいただけると嬉しゅうございます。 ご投稿をお待ち申し上げておりますよ!

新王の謀略

2012/09/29(Sat) 07:04 No.102
「王の赦免なくば出られぬか? ならば、出るがよい。俺が延王だ」
 新王にそう促され、成笙は牢を出た。新王は覇気に満ち、膝を折るに相応しい人物と感じたからだ。しかし、大僕を拝命して新王の側近くで仕えるようになり、成笙は密かに頭を抱えた。
 胎果で物を知らぬゆえ、と称して新王は宮城中を徘徊した。その際、集ってくる邪な官吏からの貢物を遍く受け取るのだ。梟王から官位を買った奸臣だ、と諫言すれば、物知りだな、と笑みを返す。成笙は思わず声を荒げた。
「主上!」
「くれるというから有難く貰っている。元は国のものだろう、返してもらうのだから問題あるまい。実際国庫は空で困っているのだからな。帷湍はいつも金がないと叫んでいるぞ」
 金目の物は全て売り払って開墾のための資金に充てている、と王は笑う。成笙は呆れて物も言えなかった。話題に上った帷湍に確認してみれば、無い袖は振れないので仕方なかろう、と口を引き結んだ。それでは、と朱衡に訊ねると、後々のために名前と明細をつけてある、と苦笑した。
「資金が足りなくなったときにせびるためだとか」
 聞いて成笙は大きく嘆息した。やりかねない。というか、あの王ならば、きっとやるだろう。そんな成笙を励ますかのように、朱衡は爽やかに笑んで続けた。
「――派手に使っている者だけを取り締まれ、と仰せですよ。預けていると思え、と」
「いずれは返してもらう」
 帷湍もそう言って力強く首肯する。成笙は納得して頷いた。

 その後、奸臣は増長し、美姫を連れてきた。しかし、王は一瞥するのみ。その態度は逆に諸官を煽る材料となった。それから、玄英宮は入れ代わり立ち代わり現れる様々な美女で彩られた。官吏たちは感嘆と好奇の目を向ける。どんな女性が新王の心を捉えるか。宮城には噂が飛び交い、競争は激化する一方であった。
「――どうなさるおつもりで?」
「実は困っておる。いずれも劣らぬ美女揃いだが、妾妃を養う財はないし、だからといって妓楼に売り飛ばすわけにもいかぬしな」
 お引き取り願うしかなかろう、と新王は困っている様子などさらさら見せずにそう言った。成笙は深い溜息をつく。新王は呵々大笑し、後宮の一室を整備せよ、と命を下した。成笙は目を見張る。今、後宮に妾妃を置くつもりはない、と明言したばかりではないか。しかし、何のために、などと問いかけるのは無意味だ。捗々しい答えが返ってきたことなどないのだから。成笙は黙して王命に従った。やがて。
 簡素ながら小綺麗に調えられた後宮の房室は、意外な人物に下賜された。与えられた当人は微妙な顔をしていたが、王は却ってそれを楽しんでいるように見えた。
「極秘で使える房室がほしいと言っておったろう」
「はあ」
 朱衡はなんともいえない表情を浮かべ、曖昧な応えを返す。頭を下げる朱衡を満足げに眺め、新王はその場を去った。成笙は無言でその後に続く。王はちらりと成笙を見やり、また楽しげに笑った。

 新王が見目のよい側近に後宮の一室を下賜した、という噂は、瞬く間に玄英宮を席巻した。どんな美女が王の心を捉えるか、と興味津々だった官吏たちは、予想外の結果に驚きを隠さなかった。その後、新王に美姫を献上する者はぱったりと途絶えたのだった。
 大僕成笙にとっては、好もしい結果となった。加熱していた騒動が収まり、新王に近づこうとする者すら減ったからだ。噂の中心人物にされた朱衡は相も変わらず涼しい顔で伺候を続けている。
「――龍陽の寵を受ける賊臣となった気分はどうだ」
「隠密行動が楽になりましたよ」
 成笙の問いに、朱衡は苦笑を零しながらも軽口を返した。それから、帷湍の前では言わないでくださいね、と付け足す。聞いて成笙も苦笑した。

 新王は今日も玄英宮を徘徊する。その姿を見かけると集ってきた者どもは見当たらない。官吏たちはその場に叩頭して礼を取り、決して顔を上げようとはしなかった。
「歩きやすくなったな」
 謀略に長けた王はそう言って笑う。素直に頷けない成笙は、蹙め面で拱手を返すのみだった。

2012.09.29.

後書き

2012/09/29(Sat) 07:11 No.103
 何もかもに詰まって三官吏を書きたくなりました。 頭が壊れてまいりましたので、コメディ風味……(苦笑)。
 はい、御題其の百二十六「有り難くない下賜」を 成笙視点で膨らませたものでございます。 原作の初めの方にある「龍陽」という言葉はいつも私の妄想を刺激して已みません〜。 お粗末でございました。

2012.09.29. 速世未生 記

いってらっしゃ〜い ネムさま

2012/09/29(Sat) 23:16 No.106
 お土産待ってるね〜、って違うか(笑)。 まずは無事のご帰還お待ちしております。
 邦王朝の初めの苦労話(?)はやはり楽しいですね。 尚隆が“王様”という唯一の自分の持ち物をフルに使って切り開いてゆく様が 気持ち良いです。
 それにしても“後宮の一室”を賜ったのが、成笙か帷湍だったら、 玄英宮の人々はすぐに納得したのだろうか…ちゃんと周囲の納得範囲を、 尚隆はリサーチしていたんですね(笑)

痛快です、殿!(笑) 饒筆さま

2012/09/30(Sun) 20:54 No.110
 素敵ですね、秋の温泉旅行! いかがでしたか?
 さて、「新王の謀略」、尚隆が玄英宮を闊歩する様子がなんだかもう痛快です!  殿、面白がりすぎですよ〜(笑)
 成笙氏って口数は少ないけれど、表情は雄弁なような気がしますよね。 ええ味出してはるわぁ。 「王+三匹がゆく!」って感じで頼もしく、 延の未来をバッサバッサ切り拓いてくれそうですね♪

戻りました〜 未生(管理人)

2012/10/01(Mon) 15:38 No.113
 春に行き損ねた峠の揚げ芋を食べてから温泉地へと向かいました。 途中の山々は黄色くなりかけておりました。 さすがに今年はどこも暖かかったらしく、 黄葉が遅れているようで残念でございました〜。 硫黄の臭いがプンプンする最も温泉らしい温泉地、 豊かなお湯を堪能してまいりましたよ。 お肌ツルツル、化粧のりもばっちりでございました(笑)。

ネムさん>
 ただ今戻りました〜。お土産がなくてごめんなさい(苦笑)。
 邦王朝初期話をお楽しみいただけて嬉しく思います。
 そうそう、優男の朱衡だからこそ周りもみな納得! なんですよね、きっと(笑)。

饒筆さん>
 玄英宮を闊歩する尚隆をご想像くださりありがとうございます!  はい、帷湍もですが、成笙も思ってることが結構顔に出るかも。 だから、かの方に遊ばれちゃうんですよね(笑)。
背景画像「空色地図 -sorairo no chizu-」さま
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