玄英宮の明るい日常@管理人作品第10弾
2012/10/07(Sun) 07:13 No.135
皆さま、おはようございます。今朝の最低気温は10.4℃。
漸く晩秋らしい気温となりました。膝掛け必須でございます(笑)。
管理人の泣き言に沢山の激励拍手をありがとうございました。励みになります〜。
さて、祭もラスト2日となりました。管理人、鋭意ラストスパート中でございます。
リクエスト作品は書き上げましたので、題名を決めたら投下しにまいりますね〜。
妄想を促す素敵作品と考察にジタバタしております。
こちらも後程レスしに戻ってまいります。ありがとうございました!
皆さまのご投稿を心よりお待ち申し上げております〜。
遅くなりました。どうやら漸く地元の山に初雪が降ったらしいです。
3週間くらい遅いような気がいたします(苦笑)。
大変お待たせいたしました、リクエスト作品をお送りいたします〜。
六太と三官吏をどうぞ。
- 登場人物 六太・朱衡・帷湍・成笙
- 作品傾向 ほのぼの
- 文字数 1584文字
玄英宮の明るい日常
2012/10/07(Sun) 18:26 No.136
「おや台輔、今日も真面目に政務をこなしていらっしゃいますね」
「誉めるな、朱衡。当たり前のことだろう」
「まったくだ」
雁州国王都関弓、凌雲山の上に聳え立つ重厚なる玄英宮。宰輔延麒の執務室に三者三様の声が響く。書卓で政務を片付けていた延麒六太は手を止めて顔を上げた。
朱衡がにっこりと笑んでいた。その隣で帷湍が青筋を立てて毒づく。そして、成笙が帷湍に同意して厳かに頷いた。
「――雁首揃えて仕事の邪魔しに来たのかよ」
六太は深い溜息をつく。己が迂闊に攫われたせいで何が起きたか。忘れるわけはないし、反省もした。だからこそ、玄英宮でおとなしく政務に従事しているわけなのだが、側近たちは必ずこうして確認しにやってくるのだ。
「台輔のお邪魔をするつもりは毛頭ございません。ですが」
主上が、と続けて朱衡は苦笑する。六太は思わず筆を放って天井を仰ぎ見た。
「またかよ!」
抜け出す方も抜け出す方だが、毎度取り逃がす方もどうかと思う。首に縄でもつけておけ、と怒鳴りそうになり、六太は慌てて口を押えた。うっかり妙なことを言えば、火の粉はこちらにも降りかかる。己の首に縄をかけられては堪らない。
「主上はどちらにおいでで?」
「おれが知るか! またどこぞの妓楼で庭でも掃いてるんだろうよ」
口走った途端、帷湍の青筋が増した。帷湍にとってあの事件は相当な屈辱だったらしい。忙しなく上下する帷湍の肩を、成笙がぽんと叩いて宥めている。真面目に仕事をするのが嫌になり、六太は頭の後ろで手を組んだ。
「ああもう、おれも出奔しようかな」
見る間に帷湍の拳がわなわなと震える。その帷湍を宥めていた成笙も黙して眉間に皺を寄せた。
「台輔、悪い見本の真似をなさる必要はございませんよ」
朱衡が苦笑気味に声を上げた。帷湍が勢いよく頷く。その様が可笑しくて、六太は唇を緩めた。
「我慢強くなったよなー、帷湍」
「誰のせいだ!」
「そりゃもちろん尚隆のせいだよな、おれは品行方正だもん」
あははと笑ってみせると、帷湍は面白いくらい顔色を変えた。眉根を寄せた成笙も帷湍を宥めるのを止める。それを慮ってか、そのくらいでご勘弁を、と朱衡がにっこりと笑った。
「主上がいつも遊んでいるわけではないことぐらい、もうお分かりでございましょう」
やんわりと諫言する朱衡の横で、帷湍も成笙も表情を和らげた。六太は大仰に肩を竦める。そんなことは言われなくてもとっくに分かっていた。
王など選びたくなかった。王は民を踏みつけにする者なのだから。それなのに、逃げこんだはずの蓬莱で、六太は己の主を見つけてしまったのだ。そう、雁を滅ぼしつくす王を選んだ、と思っていた。実際、王は民を搾取し殺すものだ、と尚隆は断じた。そうやっていつも、六太が、麒麟が受け入れたくない言葉ばかりを聞かせた。けれど。
平然と殺す殺さないの話をしながらも、尚隆が民を死に追いやることはなかった。元州の乱では、何万もの兵を動かしながら、首謀者である斡由の命さえも絶つ気はなかったのだ。不幸な結果になってしまったけれども。
それとは逆に、血を厭い、民に慈悲を施す麒麟であるはずの六太が、少なくとも三人の民を犠牲にしてしまったのだ。六太は瞑目する。胸に明朗な声が響いた。
(子供は、両親が望まなければ授からないのだろう? ようやく子を望める世になったということだな)
初めて見た里木は丸裸だった、と続け、尚隆は里木になる実を眺めていた。その顔が如何に嬉しそうだったかを今になって思い出す。荒れ果てていた雁の大地にゆっくりと緑を戻していった王。任せておけ、と笑った六太の主。
「あー、ほんとやってらんねえ」
六太は盛大な溜息をつき、再び筆を取る。王の側近たちはそんな六太に拱手し、深く頭を下げた。しかし。
「――後で迎えに行く」
帷湍がぼそりと呟く。これには無口な成笙でさえ吹き出し、宰輔の執務室は明るい笑い声に包まれるのだった。
2012.10.07.
ありがとうございました〜 未生(管理人)
2012/10/09(Tue) 06:07 No.154
大変遅くなりました。ご感想をありがとうございます〜。
饒筆さん>
リクエスターの方にお気に召していただけて嬉しゅうございます。
四者四様に勝手なことを語りまくっていた作品を纏めることができて
ほっといたしました〜。六太や帷湍の少しひねた愛、笑っていただけてよかった!
ネムさん>
愛を感じてくださってありがとうございます〜。
放っておいたら四人がそれぞれ己の愛を語り出すので実は困っておりました(苦笑)。