茶会日和@管理人作品第3弾
2013/09/18(Wed) 13:09 No.36
皆さま、こんにちは。いつも祭に拍手をありがとうございます〜。
ここのところ最低気温がぐっと下がっている北の国でございます。
昨日は明け方に急激に気温が下がり、窓が結露いたしました。
本日は既に寒さが落ち着いたらしく、そのようなことはございませんでしたが(苦笑)。
はい、最低気温は13℃、最高気温は22℃、
黄葉が進みそうな温度差でございますね。
最近小野主上からの暑中見舞いが届いたとのご報告をあちらこちらで拝見いたしました。
ご当選なさった皆さま、おめでとうございます〜。
どのくらいの確率で当たっているのでしょうね。
「当たったよ!」報告などもいただけると嬉しゅうございます〜。
因みに管理人、迷っている内に受付期間終了いたしました(苦笑)。
さてさて、管理人は漸く激白第3弾を仕上げました。
お地味な一作ではございますが、よろしければお楽しみくださいませ。
- 登場人物 陽子・鈴・祥瓊・蘭玉
- 作品傾向 ほのぼのめのシリアス
- 文字数 1040文字
茶会日和
2013/09/18(Wed) 13:13 No.37
「陽子!」
外から友の呼び声がする。景王陽子は微笑んで手を止めた。あらかた終わっていた書簡の整理を済ませて立ち上がる。窓辺に歩み寄ると、庭院で茶の支度をしていた友たちが手を振っていた。
今日は天気が良いから、と茶道具を持った鈴が笑った。外で休憩しましょう、と茶菓子を見せて祥瓊が続けた。声をかけられたそのときには、積み上げられていた案件の山はかなり低くなっていた。主の仕事の進捗を的確に見据えた提案に、陽子は笑みを浮かべて頷いた。準備をするからその間に片付けてね、と言い置いて、二人は庭院に降りていったのだ。
長く続いた残暑も落ち着き、爽やかな風が流れこんでいた。季節は秋へと移ろい始めている。穏やかな陽射が心地よい日和だった。
ささやかだが賑やかな茶会が始まった。用意された茶を啜り、とりどりの菓子をつまみながら、気が置けない友たちと他愛のない話をする。張りつめた気が緩む心温まるひととき。けれど。
そんな小さな休息が大きな贅沢に思え、陽子は溜息をつく。玻璃の入った瀟洒な城に住み、絹の衣装を纏う暮らしを送る己に課せられた責。忘れてはいけないことだが、未だ慣れないのだ。こちらの常識を学ぶために滞在した固継の里家暮らしの方が余程性に合っていた。
紙が貼られた窓、煮炊きの竈で暖を取る寒い厨房。自ら水を汲み、炊事を手伝い、掃除をした日々。理不尽に奪われてしまった、穏やかなあの
日々――。
どうしたの、と友たちが問う。茶杯を手にしたまま俯いていた陽子は、はっとした。かけられた声に重なる、もうひとつの声。そして、顔を上げた陽子の目に映る、懐かしい顔。
蘭玉。
守りたかったのに。守りきれなかった。喪ってしまった、初めての女友達。あのとき留守にしなければ、きっとここで一緒に笑っていただろうに。胸を刺す鋭い痛みに、陽子は瞑目した。
「陽子?」
名を呼ぶ声は、ふたつだけ。陽子はゆっくりと目を開けた。そして、心配そうに覗きこむ鈴と祥瓊に、敢えて笑みを送る。
「――大丈夫。お菓子が喉に詰まっただけ」
だから、と茶のお代わりを所望する。二人の友は、口々に陽子を嗜めた。
忙しいながらも穏やかな日常。時折迷いながらも歩みを止めることなく進む。見守り、手助けしてくれる友たちに励まされて。
喪った者は戻らない。だから、二度と喪うことがないように。今あるものを守っていきたい。小言を続けつつも甲斐甲斐しく茶を淹れる二人の友を見つめ、陽子は気持ちを新たにする。見上げる空は澄んだ青。それから陽子は茶会日和を心ゆくまで楽しんだ。
2013.09.08.
後書き
2013/09/18(Wed) 13:22 No.38
「黄昏の岸〜」を読んだとき、
蠱蛻衫を纏う氾麟に蘭玉を見た陽子にじんわりいたしました。
固継での日々が何事もなく過ぎていたのなら、
慶国三人娘が揃うことはなかったのかもしれません。
でも、蘭玉が生き残っていたら、四人娘だったかもしれない、
そんなふうにも思ってしまったのでした。
というわけで、蘭玉への密かな叫びをお送りいたしました。
皆さまの激白、お待ちいたしております。
2013.09.18. 速世未生 記
ご感想御礼 未生(管理人)
2013/09/19(Thu) 17:01 No.40
じわ〜とネムさんのお言葉が私の胸にも染み入ります。
三人はそれぞれに喪失を乗り越えてここに集っている。
だから、労りあいつつ楽しく過ごしていくのでしょうね。
温かなご感想をありがとうございました。
本日は中秋。私もこれからお団子を作ろうかなと思います〜。
ありがとうございました〜 未生(管理人)
2013/09/20(Fri) 15:58 No.42
壮絶な最期を遂げた蘭玉ですが、私の中ではいつも笑顔でございます。
きっと、陽子主上も笑顔の蘭玉を思い浮かべるでしょう、との妄想でございました。
ほんとうに、蘭玉はいつも陽子や桂桂の傍にいるような気がいたします。
温かなご感想をありがとうございました。