昭和の日
平成もあと1日半。昭和が更に遠くなるような…(昭和生まれの僻み?)。取りあえず、個人的に平成最後の二次創作が出来たので投稿します。令和になってから書けるといいんですが。ネタと体力と時間が欲しいです --;
登場人物:琅燦 他オリキャラや戴の人もモブ程度で
傾 向:シリアス
文字数 :1366文字
新作では生きていて!
― ひとひら ―
一斉に散る花は嫌いだ、雪を思い浮かべるから― と彼は言った。
何を言う、一年の半分は雪で覆われるこの国で― と彼女は仲間達と笑った。
憂鬱になるのだから仕方がない、だから早く仙になって雲海の上に来たかったんだ― 無愛想に答える彼に、ガキだねぇ― と彼女は笑った。
それなら奏か漣へ行ってしまえ― と誰かが言う。すると彼は薄い唇を微かに上げた。
― 驍宗様が俺をいらないと言えばね―
その後に起きる周囲からの盛大な非難を笑いながら見つつ、彼女はふと思う。この場にいる全員が彼と同じに感じているのだと。時に息を飲むほど苛烈な将は決して麾下を裏切らず、その将に認められたことが自分達にとって、どれだけ誇りになっているか。
そうした安心感の下での言い合いに
― 結局私達もガキみたいなもんだ―
と彼女は苦笑した。
「今日も良いご返事は頂けないのでしょうか、大司空」
淡々として男の声に、明かり取りの窓から吹き込んだ雪片に気を取られていた琅燦は、現実に引き戻された。
「“主上”は大司空の頭脳を高く買っておられます」
「そりゃ、どうも」
皮肉を利かせて言ってやったつもりなのに、口が強張って声にならない。そんな自分に苛立ち、腹に力を込めて言い返す。
「確かに“驍宗様”は私を認めて下さってたからねぇ」
覚悟をする前に、片頬に衝撃が走る。この何もない、暖を取ることさえ出来ない部屋に幽閉されてから数年経つが、立場の割にはそれ程ひどい扱いは受けていない。ただ、驍宗の名前を出すと、今のようになるのだが。
― ったく、教育が行き渡ってるよ ―
口内の血痰を吐き出す琅燦を見下ろし、相手は続ける。
「大逆者の劉が垂州へ向かったという報せがありました。無断で宮城から去った大司冠も一緒とか。垂州は妖魔の巣窟、捕縛されずとも存えるのは無理でしょう。
主上と長く誼のある貴女が、彼の者達のような愚を犯さぬことを願っております」
そう言って相手は立ち去り、琅燦はまた抱え込んだ膝の上に俯いた。
― 李斎も気の毒に。二声氏が彼女の元へ逃げ込んだとしても、驍宗軍の一員として国中に知れ渡っている古株連中より、新米の彼女に罪を着せた方が、周囲も納得しやすかったんだろう―
事実、琅燦も疑問を持ちながら、李斎の大逆に異を唱えることはしなかった。明晰な頭脳と冷静な判断を誇る彼女でさえ、驍宗の下に結束した仲間達へ疑いの目を向けることを躊躇ったのだ。
― 前に李斎へ“台輔を甘やかしている”なんて言ったことがあったけど、私の方が余程甘ちゃんだったよ。長い付き合いだったのに、阿選のことも、あいつのことも、未だに何でこんなことを仕出かしたか、分かってないんだからね ―
琅燦は苦い笑みを浮かべた。
― まぁ、こっちに染まらないうちに逃げ出せて良かったかもしれない。李斎も花影も、結構しぶとそうだから … なんて根拠のない望みを抱くようになるなんて、私も焼が回ったか ―
笑みを貼りつかせたまま、琅燦は視線を宙に漂わせた。
また雪片が舞い降りてきた。ふと琅燦は目を眇める。
一日一回の食事では、いくら仙とは言え栄養が滞るのか、最近目が良く見えない。それでも降りてきた一片に腕を伸ばし、そっと掌に乗せてみた。
「… ガキだねぇ」
遠い仲間達へ掛けた声はやさしかった。
「花はね、散ってもまた咲くってこと、知らないのかい」
掌には、微かに紅を含んだ白い花びらが乗っていた。
一斉に散る花は嫌いだ、雪を思い浮かべるから― と彼は言った。
何を言う、一年の半分は雪で覆われるこの国で― と彼女は仲間達と笑った。
憂鬱になるのだから仕方がない、だから早く仙になって雲海の上に来たかったんだ― 無愛想に答える彼に、ガキだねぇ― と彼女は笑った。
それなら奏か漣へ行ってしまえ― と誰かが言う。すると彼は薄い唇を微かに上げた。
― 驍宗様が俺をいらないと言えばね―
その後に起きる周囲からの盛大な非難を笑いながら見つつ、彼女はふと思う。この場にいる全員が彼と同じに感じているのだと。時に息を飲むほど苛烈な将は決して麾下を裏切らず、その将に認められたことが自分達にとって、どれだけ誇りになっているか。
そうした安心感の下での言い合いに
― 結局私達もガキみたいなもんだ―
と彼女は苦笑した。
「今日も良いご返事は頂けないのでしょうか、大司空」
淡々として男の声に、明かり取りの窓から吹き込んだ雪片に気を取られていた琅燦は、現実に引き戻された。
「“主上”は大司空の頭脳を高く買っておられます」
「そりゃ、どうも」
皮肉を利かせて言ってやったつもりなのに、口が強張って声にならない。そんな自分に苛立ち、腹に力を込めて言い返す。
「確かに“驍宗様”は私を認めて下さってたからねぇ」
覚悟をする前に、片頬に衝撃が走る。この何もない、暖を取ることさえ出来ない部屋に幽閉されてから数年経つが、立場の割にはそれ程ひどい扱いは受けていない。ただ、驍宗の名前を出すと、今のようになるのだが。
― ったく、教育が行き渡ってるよ ―
口内の血痰を吐き出す琅燦を見下ろし、相手は続ける。
「大逆者の劉が垂州へ向かったという報せがありました。無断で宮城から去った大司冠も一緒とか。垂州は妖魔の巣窟、捕縛されずとも存えるのは無理でしょう。
主上と長く誼のある貴女が、彼の者達のような愚を犯さぬことを願っております」
そう言って相手は立ち去り、琅燦はまた抱え込んだ膝の上に俯いた。
― 李斎も気の毒に。二声氏が彼女の元へ逃げ込んだとしても、驍宗軍の一員として国中に知れ渡っている古株連中より、新米の彼女に罪を着せた方が、周囲も納得しやすかったんだろう―
事実、琅燦も疑問を持ちながら、李斎の大逆に異を唱えることはしなかった。明晰な頭脳と冷静な判断を誇る彼女でさえ、驍宗の下に結束した仲間達へ疑いの目を向けることを躊躇ったのだ。
― 前に李斎へ“台輔を甘やかしている”なんて言ったことがあったけど、私の方が余程甘ちゃんだったよ。長い付き合いだったのに、阿選のことも、あいつのことも、未だに何でこんなことを仕出かしたか、分かってないんだからね ―
琅燦は苦い笑みを浮かべた。
― まぁ、こっちに染まらないうちに逃げ出せて良かったかもしれない。李斎も花影も、結構しぶとそうだから … なんて根拠のない望みを抱くようになるなんて、私も焼が回ったか ―
笑みを貼りつかせたまま、琅燦は視線を宙に漂わせた。
また雪片が舞い降りてきた。ふと琅燦は目を眇める。
一日一回の食事では、いくら仙とは言え栄養が滞るのか、最近目が良く見えない。それでも降りてきた一片に腕を伸ばし、そっと掌に乗せてみた。
「… ガキだねぇ」
遠い仲間達へ掛けた声はやさしかった。
「花はね、散ってもまた咲くってこと、知らないのかい」
掌には、微かに紅を含んだ白い花びらが乗っていた。
ああ、姐さん……っ!
琅燦姐さん、カッコイイ……!
歯に衣着せぬ琅燦はぜひぜひ生きていて欲しいですね……道を外れたかつての仲間にビシッと啖呵を切って欲しいです。
確かに、黄昏〜は李斎視点で語られていますから、古参の面々がどう感じてどう動いたかは知りたいですね。秋の新刊でわかるのかなあ〜阿選と誰がグルだったのかとか胸が痛いなあ……
驍宗さまの、一気に満開になるような華麗なカムバックを望んで止みません。
クールでしたたかで、でも深い親愛を失わない素敵な姐さんをありがとうございます。
歯に衣着せぬ琅燦はぜひぜひ生きていて欲しいですね……道を外れたかつての仲間にビシッと啖呵を切って欲しいです。
確かに、黄昏〜は李斎視点で語られていますから、古参の面々がどう感じてどう動いたかは知りたいですね。秋の新刊でわかるのかなあ〜阿選と誰がグルだったのかとか胸が痛いなあ……
驍宗さまの、一気に満開になるような華麗なカムバックを望んで止みません。
クールでしたたかで、でも深い親愛を失わない素敵な姐さんをありがとうございます。
本当に無事でいて。
おそらく秋の新刊で全てがわかるのでしょうけど、誰が阿選についているのかちょっと知るのが怖い気もします。なんにせよ琅燦には是非に新刊でも生きていて欲しいです。染まることなく琅燦のまま。泰麒と李斎、すっごい大変だろうけど頑張って!!
何度も読み返したくなるお話でした。ありがとうございます!
何度も読み返したくなるお話でした。ありがとうございます!
ありがとうございました!
饒筆さん> 琅燦の啖呵! それはもう是非聞いてみたいです。新作では驍宗様と共にしっかり復活してくれますように。
瑠璃さん> 本当に、真実は知りたいけど、知るのが怖いという気持ちはありますよね。特に待つ時間が長かったから(苦笑)。李斎と泰麒はここからが本番!(特に泰麒)だから、是非頑張ってもらいましょう。
コメントありがとうございました!
蛇足ですが、昨日妹に戴メンバーのレクチャーをしていたら「これだけ一気に登場人物を出したのは、小野先生のミステリー作家部分が出たんじゃない。犯人は誰だっていう伏線で」と言われ、ポンと手を打ちました。刑事達(読者諸兄)の捜査を混乱させるために、これだけ美味しいメンバーを出してくれたのなら、小野先生、大盤振る舞いだわ〜、と別方向で喜んでしまいました ^^;
瑠璃さん> 本当に、真実は知りたいけど、知るのが怖いという気持ちはありますよね。特に待つ時間が長かったから(苦笑)。李斎と泰麒はここからが本番!(特に泰麒)だから、是非頑張ってもらいましょう。
コメントありがとうございました!
蛇足ですが、昨日妹に戴メンバーのレクチャーをしていたら「これだけ一気に登場人物を出したのは、小野先生のミステリー作家部分が出たんじゃない。犯人は誰だっていう伏線で」と言われ、ポンと手を打ちました。刑事達(読者諸兄)の捜査を混乱させるために、これだけ美味しいメンバーを出してくれたのなら、小野先生、大盤振る舞いだわ〜、と別方向で喜んでしまいました ^^;
雪どけ近しと思いたい
文茶
2019/05/01(Wed) 17:13 No.450


おのれ、手をあげるなどと......!と、頭に血が上りましたが、琅燦の冷静さにぐっと拳を収め。 気丈に振る舞いながらも、仲間を思い出す時にみせる弱さ(優しさ)に切なくなりました。 どうかまた皆で笑いあえる日が来ますように。
そして妹さんのお言葉に眼から鱗が落ちました!なるほど、やりますな小野先生。 そう考えると簡単には解き明かせないですよね。 全ての謎は今秋に!!(デデーンッ)って感じですかね!?
そして妹さんのお言葉に眼から鱗が落ちました!なるほど、やりますな小野先生。 そう考えると簡単には解き明かせないですよね。 全ての謎は今秋に!!(デデーンッ)って感じですかね!?
ああ……
未生(管理人)
2019/05/01(Wed) 23:13 No.459


琅燦! お元気そうでよかった……!
ほんとに無事でいてほしゅうございます。戴の雪融けが進み、きちんと春になりますように。
昭和生まれ永遠の30歳である管理人も平成が30年で終わったことに胸を衝かれております(苦笑)。平成当初のしめやかさとは違い、華やかに賑々しく始まった令和が穏やかに過ぎることを願って已みません……。
饒筆さん、瑠璃さん、文茶さん、先レスありがとうございました。
ほんとに無事でいてほしゅうございます。戴の雪融けが進み、きちんと春になりますように。
昭和生まれ永遠の30歳である管理人も平成が30年で終わったことに胸を衝かれております(苦笑)。平成当初のしめやかさとは違い、華やかに賑々しく始まった令和が穏やかに過ぎることを願って已みません……。
饒筆さん、瑠璃さん、文茶さん、先レスありがとうございました。
ありがとうございました!
文茶さん> ひぇ〜 そ、そんな文茶さんが拳を上げるなど〜。大丈夫、琅燦がきちんと自分で落とし前を着けますから(あ、そっちの方が怖いかも)本当に皆無事で出会えることを願って止みません。いざ、今秋を待て!ですね ^^v
未生さん> とうとう令和が始まりましたね。十二国も時代を跨いでしまったわ… 常世も蓬莱も、元気で平和な時代でありますように。
コメントありがとうございました!
未生さん> とうとう令和が始まりましたね。十二国も時代を跨いでしまったわ… 常世も蓬莱も、元気で平和な時代でありますように。
コメントありがとうございました!
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