桜の背
2007/03/23(Fri) 09:00 No.19
咲き初めた薄紅の花を見つめ、景王陽子は口許をほころばせる。ゆっくりと手を伸ばし、開きかけた花弁にそっと触れる。まるで、桜に語りかけるかのように。
桜が咲くと、陽子は吸い寄せられるように庭院に向かう。無理のない笑顔で桜と語らう陽子は、はっとするほど美しい。
時が止まったように静まり返った庭院に佇む女王を、祥瓊は回廊にて見守る。桜花との静謐な語らいを、邪魔する者がないように。
伴侶を喪って尚、涙を見せぬ女王に、臣として友人としてできること。それはこうやって見守ることだけなのだ、と祥瓊は思う。
慰めを拒絶するその細い背に、祥瓊は黙して告げる。陽子、あなたは独りではないのよ。いつも私はここにいるわ。振り返ったあなたに、笑顔を贈れるよう
に──。
2007.03.13
後書き
2007/03/23(Fri) 09:05 No.20
鈴のお話を書いたので、祥瓊にも語ってもらおうと思っておりました。
──祥瓊は、静かに友を見つめておりました。書いている作者も、少し切なくなりました……。
2007.03.23. 速世未生 記
そのようです 未生(管理人)
2007/03/25(Sun) 07:22 No.25
けろこさん、いらっしゃいませ〜。
お察しのとおり、「桜」妄想が進んでおります。
陽子は見守る瞳があることを知っているひとであってほしいと思います……。
しんみりしがちな私ですが、だからこそ、楽しい作品とコメントをお待ちいたしております〜。
メッセージ、ありがとうございました!