花想う者の心知らぬ花
2007/04/05(Thu) 10:21 No.69
ひらり、舞い落ちるものに、楽俊はふと目を上げる。ひらり、ひらり、風と戯れるように舞い踊るそれは、桜の花びらだった。
桜は蓬莱では春を告げる花なんだよ。
そう言った親友の声が耳に響いた。陽子、元気か。自然と笑みが浮かび、楽俊は髭をそよがせる。そのとき。
「楽俊!」
喜色を湛えた声がして背中に柔らかなものがぶつかってきた。それは折りしも今胸に思い浮かべていた友だった。
「よ、陽子! 慎みを持てって何度言ったら……」
「久しぶりに会えたのに、開口一番それなのか?」
振り返ると目に入る陽子の拗ねた顔。楽俊は苦笑するしかなかった。
「ところで、どうして陽子が雁にいるんだ? まさかまた……」
「人聞きの悪いことを言わないでくれよ、楽俊。視察だよ、ほら」
楽俊はあまり素行のよろしくない慶国の王に苦言を呈す。今度は陽子が苦笑して、近くの桜の木を指した。そこには雁の国主がいて、酒盃を掲げ、にっこりと笑んでいる。
楽俊は背筋に薄ら寒いものを感じ、思わず肩を竦めた。
視察って、酒を飲みながら花を見ることか? しかも、随従もつれずに二人きりでか? それって、花見って言わねえか?
突っ込みどころが満載で、楽俊は目眩を覚えた。
「──陽子」
「なに?」
延王尚隆の、多少不穏に思えるその笑みを横目で見やり、楽俊は深く嘆息する。それから、陽子の翠玉の目を真っ直ぐに見つめて諫めた。
「──お前、やっぱり慎みが足りないぞ」
「なんで?」
陽子は無邪気に問い返す。伴侶の前で他の男に抱きつくな、とはっきり言えない楽俊は、もう一度大きな溜息をついたのだった。
2007.04.05.
後書き
2007/04/05(Thu) 10:26 No.70
バカバカしいものでお粗末さまでした。そして、奈緒さん、けろこさん、ごめんなさいね〜。
でも、この連鎖妄想が「祭ノリ」のひとつと私は信じておりまする。
どうぞお許しくださいませ〜。
はい、末声の書きすぎでちょいと頭が壊れかけてる管理人でした。
お目汚し失礼いたしました(ぺこり)。
2007.04.05. 速世未生 記
──(苦笑) 未生(管理人)
2007/04/06(Fri) 04:45 No.74
こんな拙いもので楽しんでいただけたなら、大変光栄でございます〜。
そして、更なる妄想を呼び起こすコメントをありがとうございます。
──頭が壊れているので、ちょっと危ないかも。
で、誤解を招いているようですね。
す、すみません、管理人作品第4弾は「慟哭」でございます……。