果実の秘密を知ればこそ
2007/05/15(Tue) 23:25 No.176
「な、なんでお前が知ってるんだ?」
「何を、とお訊きしておきましょうか」
羞恥に頬を染める景王陽子に、冢宰浩瀚はあくまでも涼しい笑顔で問いかける。陽子はぐっと答えに詰まり、ますます頬を火照らせた。浩瀚はくすりと笑い、尚も畳みかける。
「桜桃の軸を口で結べることの意味をご存じの上で、主上は私にやってみよと命じられたのでしょう?」
「──命じた覚えはないぞ」
「主上が仰れば、私は拒むことなどございませんよ」
「──お前はやっぱり底意地が悪い」
「お分かりの上で私をお試しになるとは、主上はお可愛らしい」
憮然と睨めつける陽子の頭を撫でて、浩瀚はにっこりと笑う。陽子はますますいきりたった。
「子供扱いするな!」
「大人と思えばこそ、主上御自らお試しになりますか、と申し上げましたのに」
「──お前には敵わないなぁ」
立て板に水の如き冢宰の言に、景王陽子は深い溜息をつく。そして、観念したように、衝立の陰からそっと覗いていた延麒六太に指を交差して見せた。隣国の宰輔を横目で睨み、怜悧な冢宰は主に諫言する。
「主上、甘い誘いにすぐに乗ってはいけませんよ」
「はーい……」
項垂れて肩を落とす陽子とともに、六太も大きく息をついたのだった。
2007.05.15.
後書き
2007/05/15(Tue) 23:29 No.177
久々の夜更かしにアドレナリンが出まくっているような気がいたします〜。
コーヒーなんか飲んでるから、余計そうなるのかしらん。
バカバカしいものをお見せして、大変失礼いたしました!
はい、こんなときは裏で暗いものを書いております。もうバレバレですかね……。
けろこさん、こんなふうにしちゃってごめんなさい!
2007.05.15. 速世未生 記
実は…… 未生(管理人)
2007/05/17(Thu) 05:22 No.189
けろこさん、連鎖妄想をお許しくださってありがとうございました!
実は、私も頭の中ではこの続き、ちゃんと正統派浩陽だったのですよ。
けれど、実際書いてみたら、全然違う方向へ……(笑)。
久々に明るいものが書けたので、まあいいか、と開き直ったのでした。
お楽しみいただけたなら、とっても嬉しいです〜。